「ネスカフェ アンバサダー」「マスキングテープ」が好例。“日本発のイノベーション”から学べること

2024.01.18
 

市場とかかわるなかで直面する不確実性

企業とは、市場と向かい合いながら事業を展開していく組織体である。そして、この基本図式(図表1)のもとで考えれば、イノベーションのひとつの源泉は企業活動を支える技術のブラッシュアップである。すなわち企業が扱う製品やサービス、そしてそれらの生産や供給の効果や効率を画期的に高める技術の獲得である。

▼図表1 市場と向かい合いながら事業を進める企業

▼図表1 市場と向かい合いながら事業を進める企業

たとえばGoogleの検索エンジン、トヨタのハイブリッド、マイクロソフトのChatGPTなどの事業は、企業、あるいはその創業期における個人が開発した画期的な技術の成果である。もちろん、こうした画期的な技術を企業はすべて内部で開発するわけではなく、パートナーとなる企業や大学と連携したり、ベンチャー企業を買収したりして入手することもある。

そして企業には、もうひとつの重要なイノベーションの源泉がある。企業が市場とかかわるなかで直面する各種の不確実性もまた、企業がイノベーションを生み出す機会となる。とはいえ一方で、この市場とのかかわりにおける不確実性は、企業に大小各種の危機をもたらすこともある。しかしそれらを逆手にとることで、画期的な技術開発はなくとも、社会や産業を変革し、新しい価値と富を生み出すイノベーションに成功する企業もある。

たとえば、ネスレ日本が手掛けたネスカフェ アンバサダー、カモ井加工紙によるマスキングテープのMT、そしてリクルートによるスタディサプリなどは、すでに開発済みの技術、あるいは誰もが広く一般に利用可能な、いわゆる枯れた技術を活用しながら、社会や産業を変革し、新しい価値や富を生み出している。これらのイノベーションは画期的な技術を新たに入手したことによる成果とはいいがたい。

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わからないから、行動する、しない?

では、この市場とのかかわりから生まれるイノベーションに、企業はいかに挑めばよいか。本書は、この問いをめぐって、エフェクチュエーションを基軸に据えて、新たな理解を探求する。その要諦となるのは、企業の市場とかかわることで直面する、各種の不確実性との向き合い方である。

「わからないから行動しない」か、「わからないから行動する」か。いずれの姿勢をとるかが、市場とのかかわりから企業がイノベーションを実現していくことができるか否かの分水嶺となる。思わぬ未来は行動してみることで生まれることが少なくないわけであり、わからないから行動してみる実践を、組織や社会のなかで活性化する環境を整えることの重要性である。

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