90%のシェアを占める分野も。日本の「半導体製造装置」産業の実力を英経済誌が認めた

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スマホやパソコン、家電や自動車に至るまで、我々の身の回りのあらゆる製品に組み込まれている半導体。そんな半導体製造装置の分野において、日本企業が世界で大きな役割を果たしていることをご存知でしょうか。今回のメルマガ『在米14年&海外販路コンサルタント・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』では著者の大澤さんが、英国有力誌が我が国の半導体装置メーカーの実力を取り上げた記事と、中国政府の同分野への取り組みを伝える記事を紹介。その上で、日本の半導体製造装置産業は安全保障の観点からも「有力な交渉材料」になるとの見方を記しています。

世界に誇る日本の半導体製造装置

半導体製造装置は日本が世界に誇る産業分野です。

それについて英誌エコノミストが論じています。2024年2月15日の記事です。

好調な日本の半導体装置メーカー、いつまで続く?

 

長らく投資家から疎まれてきた日本企業が注目を集めている。

 

特にチップ(半導体集積回路)製造装置メーカーがそうだ。

 

2月13日、東京エレクトロンは昨年最終四半期に予想を上回る利益を計上し株価は13%上昇した。現在日本で4番目に価値の高い企業となっている。

 

東京エレクトロン、アドバンテスト、ディスコ、レーザーテック、スクリーン・ホールディングスの時価総額上位5社の合計額は、ドルベースで過去1年間に倍増した。

 

今回の上昇は、景気循環以上のものだ。人工知能を処理できるチップの需要は、それを製造するためのより多くの装置の需要を意味する。

 

日本メーカーは、半導体のサプライチェーンのニッチな分野で長い間支配的な役割を果たしてきた。

 

東京エレクトロンは、フォトレジスト・コーティング(製造工程で半導体ウェハーに塗布される感光性化学薬品)を施す設備の世界市場で約90%のシェアを占めている。

 

ディスコも同様に、チップ製造に必要な精密切削・研削工具で圧倒的なシェアを占めている。

解説

好調な日本の半導体製造装置産業について記しています。

しかしながら、中国はこの分野にも進出してきています。同じ号の別の記事を見ていましょう。

中国、海外チップ技術への依存を静かに減らしている、ファーウェイなどの企業が地元サプライヤーを開拓中

 

中国政府は長年、国内のチップ産業に補助金をばらまいてきたが、アメリカやその同盟国が課す貿易制限への懸念が高まり、この取り組みをさらに強化することになった。

 

2022年、中国政府は「情報革新」プロジェクト(xinchuang)と呼ばれる国家的な取り組みを強化した。

 

中国のチップ産業は秘密のベールに包まれている。ブレークスルーや失敗はしばしば国家機密とみなされ、それを漏らすと逮捕されることもある。

 

8月、中国のハイテク王者ファーウェイは、7ナノメートル(nm)チップを搭載したスマートフォンを製造し、世界に衝撃を与えた。

 

それでもまだ、中国のチップ産業は技術的フロンティアからはほど遠い。

 

ファーウェイとSMICが最終的に5nmチップの生産に成功したとしても、韓国サムスンや台湾TSMCが2022年時点で3nmチップの量産を開始していることに比べれば、はるかに遅れをとることになるだろう。

 

しかし中国の最大手企業のいくつかが、地元の代替製品を試すことに前向きになっている。これにより、サプライヤーはフィードバックを受け、設計を改善する機会を得ることができる。

 

これはリスクを伴うが、中国政府は現地の装置を購入するメーカーに補助金を支給することで、その道を緩和していると考えられている。

 

アメリカ商務省の試算によると、中国はすでに約1,500億ドルの補助金をチップ産業に投入している。

 

ウェハー製造装置の中国メーカーの国内市場シェアは、2019年の4%から昨年は推定14%に上昇した。

 

中国当局は海外から輸入する効率性よりも国内自給の安定性を重視している。その代償は価値があると判断しているのだ。

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