止まらない日本の低学歴化。博士号取得者が採用されぬ我が国の行く末

Tokyo,,Japan,-,05.26.2023:,Crowd,Of,Japanese,Passenger,Waiting,To
 

かねてからさまざまな理由で、一般企業が採用に二の足を踏み続けてきた博士号取得者。その流れに歯止めがかかることはなく、ますます日本の「低学歴化」は進んでいるようです。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では社会健康学者の河合さんが、博士号取得者の採用が低水準のまま推移している現状と、修士号取得者すら減少している事実を紹介。その上で、何が世界の先進国に逆行する我が国の惨状を招いたかについて考察しています。

プロフィール河合薫かわいかおる
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

もはやジリ貧。低学歴化に歯止めがかからぬニッポンの悲しい現実

日本の「低学歴化」が止まりません。

経団連が実施した調査で(123社が回答)、2022年度に博士課程修了者を採用しなかった企業が23.7%にのぼり、博士号を取得している人の合計はおよそ1.2万人で全体の1%未満にとどまったことがわかりました。

また、女性理工系人材については、6割の企業が増員を目指しているの対し、博士人材の採用を増やす意向を示したのはたったの2割。博士号取得者の企業の採用意欲は、一向に高まっていませんでした。

日本の「低学歴化問題」は15年以上前から指摘され、さまざまな取り組みが行われていた“はず“なのに。そもそも採用意欲がない、とは。日本はこの先、何で稼いでいくつもりなのでしょう。

かつて日本企業は、企業で研究をしながら論文博士として学位を取る社員を増やしてきました。

2019年にノーベル化学賞を受賞した旭化成名誉フェローの吉野彰氏もその一人ですし、2014年に青色発光ダイオードでノーベル物理学賞を受賞した中村修二氏も論文で博士号を取得した論文博士です。

国も1996年に「世界に追いつけ、追い越せ!」とポスドク(博士研究員)1万人計画を立て、大学院博士課程の定数をそれまでの3倍もの規模に増員しました。

しかし、増やしたのは「入り口」だけ。博士号取得者を欲しがる大学も企業もなく、1万8,000人もの“さまようポスドク就職浪人”が量産され、出口対策がモヤモヤしているうちに博士号取得者は減少傾向に転じ、修士号取得者も減り、世界の先進国と逆行するようになってしまったのです。

欧米諸国では2006年から16年までの10年間に博士号・修士号の取得者が2ケタ増えたのに対し、日本は16%も減少。文部科学省などの最新の調査によると、日本の博士号取得者は人口100万人あたりで123人(20年度)に対し、ドイツ315人、英国313人で、その差は歴然としています。

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