開戦から2年が経った現在も、各地で激しい戦闘が続くウクライナ戦争。泥沼化したこの戦争を終結させる手立ては、もはや存在しないのでしょうか。今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』ではジャーナリストの高野さんが、戦争にまで至った「ウクライナ問題」の本質を上げるとともに、それを踏まえ冷静に考えれば「戦争の出口」は簡単に導き出せると断言。さらにクリミアの返還が終戦交渉の対象とならない理由を解説しています。
※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2024年2月26日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:高野孟(たかの・はじめ)
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。
なぜ気づかぬ。泥沼「ウクライナ戦争」の出口
ロシアのウクライナ侵攻から2年/泥沼の戦争に出口はあるのにどうして気がつかないのか?
2022年2月24日にロシアがウクライナに軍事侵攻してから丸2年で、戦況はどうなのか、泥沼状態を終わらせる妙策はあるのかと議論が喧しい。が、注意深い読者はお気づきのことと思うが、本誌は22年の春から夏にかけてはウクライナ情勢を頻繁に論じたものの、それ以降はほとんどこの問題を取り上げていない。理由は簡単で、このことの戦略論的本質を踏まえない議論ばかりが横行するマスコミの有様に心底ウンザリし、そこへ参入していく気が全く起こらないからである。
ウクライナが犯した致命的な誤り
ウクライナ問題の本質とは何か。東部諸州のロシア系住民が多数を占める地域において、彼らのロシア語を喋る権利を含めた一定の自治権を付与する恒久法を、キーフ政府が責任を以て制定するという2014年9月のウクライナ、ロシア、およびドネツクとルガンスクの自治政府による「ミンスク合意」、それらに後見役としてドイツとフランス、そして緩衝・仲介役としてOSCE(全欧安保&協力機構)が加わった15年2月の「新ミンスク合意」を実現することであって、それ以外に難しいことは何もない。
2014年2月の米国務省とネオコン勢力の支援を受けた反露派クーデターの後にトップに躍り出たポロシェンコ大統領、19年5月に取って代わったゼレンスキー大統領のどちらかがミンスク合意を実現していれば、そもそもロシアの侵攻は起こり得なかった。もちろん、だからと言ってプーチン露大統領の軍事侵攻という選択が正しかったということにはならないどころか、完全に間違っていたことは、結果としての現状を見れば一目瞭然ではあるけれども、それにしても、ウクライナ側がミンスク合意を真面目に取り扱わなかったのは致命的な誤りだった。
なぜなら、仮に昨年9月以降のウクライナ側の東部諸州に対する「反攻」作戦が成功して、ロシア軍を国境外まで押し返したとしても、そこでゼレンスキーが直面するのは、20年前と同じく、東部のロシア系住民にどれほどの自治権を付与してウクライナ国内で生きる権利を保証するのかという問題でしかないからである。それが出来ないなら東部をロシアに割譲することを受け入れなければならない。
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