3.オタク文化が海外にも広がった
経済成長時代は、自分の富を他人に自慢することに喜びを見いだすことが多い。高級車に乗ったり、高級なお酒を飲んだり、高級なレストランで食事をしたり。これらの行為の多くは、他人の目を意識した行動だ。また、単独の行動ではなく、カップルの行動が基本となる。異性にもてたいという欲求が強く、異性にもてている自分を他人に自慢したいのだ。
経済の低成長時代になると、他人と行動を共にするより、自分一人で趣味の世界に没頭することを好む人が増える。それがオタクだ。バブル時代にもオタクは存在したが、当時のオタクという言葉は、根暗で、コミュニケーション能力がない変人というイメージが強かった。
現在のオタクには、「自分の好きなことに熱中する純粋な人」というプラスのイメージがある。このオタクの良いイメージは世界に広がっている。
オタクは社会の価値観にとらわれず、個人の価値観を大切に考える。オタクを認めるということは、多様性を認めることにもつながる。カップルでなくても、個人が自立して生活を楽しむことも良い評価になっているのだ。
そして、オタクを許容する社会は全体主義ではなく、個人を尊重する社会でもある。
4.人に喜ばれるために働く
経済成長時代は、金を稼ぐことが正義と考える。景気の良い時代は、ビジネスチャンスも多く、当たり前のことをしていても成功できる。勿論、努力すれば、更に成功するチャンスがある。
逆に、不景気になると、努力しても簡単には稼げなくなる。チャンスは少なく、挑戦することさえ困難だ。一度失敗すると取り返しがつかない。だから、挑戦しないという空気が支配的になる。
簡単に稼げないのなら、人に喜んでもらったり、感謝されることが嬉しいと考えるようになる。人に優しく接することで金は稼げないが、感謝されることはあるのだ。
災害時には、人々の連帯が高まる。そして、人と人との絆が大切になる。日本人は、皆が困っている状況の中で自分さえ良ければいいとは考えない。それと同じように、不景気の時代も人から感謝されることを望むようになる。お金のための仕事から、人から喜ばれるための仕事へと変わっていくのだ。
社会起業家を目指したり、ボランティアに参加することは、経済が低迷してからの方が増えている。
そういう意味では、景気が後退し、失われた30年と呼ばれる時代は、日本を良い方向に導いたとはいえないだろうか。
編集後記「締めの都々逸」
「金で全てを 計るのやめて 清く正しく 生きましょう」
ひねくれた性格のせいなのか、日本が景気回復すると聞いても、またバブルの頃の下品な時代が来るのかと不安になります。最近は、バブル時代の良いことばかりが強調されますが、モラルのない時代でもありました。中国が景気後退していますが、こちらは貧すれば鈍するになりそうです。
現在、日本が世界中から高く評価されているのは、失われた30年間、日本人が謙虚になり、お金に流されなかったからだと思います。良いところを失わずに、経済が良くなれば最強ですが、さて、どうなることでしょう。(坂口昌章)
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