3月8日の「世界女性デー」を前に、イギリスの政治経済誌「The Economist(エコノミスト)」が、OECD加盟38カ国中29カ国を対象とした“女性の働きやすさ”のランキングを発表。日本は下から3番目の27位と相変わらずの低評価でした。今回のメルマガ『佐高信の筆刀両断』で、評論家の佐高信さんは、雑誌で対談した『ハマのドン』の松原文枝監督と作家で写真家の星野博美さんが語った日本の会社のおかしなところについて紹介。なぜ優秀な女性が日本の会社は働きにくいと感じてしまうのか、その理由を探っています。
女性にとっての日本の会社
先日、何気なくテレビを見ていたら、子どもに望む親の就職希望先として、トップが公務員、次にいきなりトヨタ自動車と来て、驚いた。大企業ならということで、その象徴がトヨタなのだろうが、トヨタはいま、ワンマンの豊田章男の下で、危ういところに立っている。親の中でも母親はそんなことはまったく考えないのかもしれない。
『俳句界』の対談で、『ハマのドン』の監督の松原文枝と『世界は五反田から始まった』の著者、星野博美と会って、女性の就職もまた大変なのだな、と思った。男の方が“社畜”になりやすいが、女性は会社がそんな封建社会だとは、入る前は想像しない。いや、ある程度は考えるだろうが、まさか、そんなにひどいとはと思うのだろう。
松原は女性が活躍できるという触れ込みだったので、NHKからも内定をもらっていたが、東京銀行に入った。しかし、3日でこれは違ったなと悟った。朝はラジオ体操から始まる。東京銀行は外国人の社員も多いが彼らは「何でやるのかわからない」と言いながら、やっていた。そして男女一緒の社宅に入る。「朝はみんな一緒にご飯を食べ、『日経新聞』を読む」共同行動が苦手な松原は辛かった。女性は制服を着るのだが、スカートは膝下何センチと細かく決まっていた。
「自由な発想・思考がなければ、新しいものは生み出せないのに、全部型にはめようとするんですよね。その型も、意味があるならまだいいんですけど、何のためにやっているのかわからない」こう首をかしげた松原は次のように続けた。
「女性は大学までは男女フラットだったのに、企業に入ると、明らかに違う社会が待ち受けている。そこで、社会がおかしいと気づく。でも男性はいかに早く慣れて出世するかということに注力するので、おかしさには気付かないんです」それでテレビ朝日に入ったが、「報道ステーション」のプロデューサーとなって、社会のおかしさを突く番組づくりをして左遷させられる。
星野は最初、商船三井に入った。「中国や香港との架け橋になりたいので、中国課に入れて下さい」面接でそう言ったら、中国課に入れてくれた。しかし、1年勤まらなかった。一番合わなかったのは何か?「会社の組織ですね。大勢の人と何かをすることが難しい」
船会社はおおらかな人が多かったが、星野は変わり者だったので、いわゆる“お局”のターゲットにされた。「よし、きた!」と反抗していたが、ムダなエネルギーを使っているのに気づく。星野は「私が男だったら攻撃に遭わなかったんでしょうけど」とも言っていた。
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