勤勉とされる日本人の源流を作ったと言われている江戸前期の禅僧・鈴木正三。彼が開いた宗教を今も守り続ける鈴木正三顕彰会の小林誠会長が、メルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』の中で、鈴木正三の「独特な仏教」について紹介しています。
働くこと=仏道修行?
日本人の勤勉性、資本主義の精神の源流をつくったとして高く評価される江戸前期の禅僧・鈴木正三。
正三の生まれ故郷・愛知県豊田市則定町にある鈴木正三顕彰会の小林誠会長に、その生涯や独自の仏教について紐解いていただきました。
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【小林】
……2年ほど関西で学問や修行に励み、郷里に戻ってきた正三は千鳥山辺り、石ノ平の山中に庵を結び、滝行や吹き晒しの洞窟で坐禅を組むなど壮絶な荒行を敢行します。
あまりの過酷さに医者に見放されるほどの大病を患いますが、医学の素養があった(弟の)重成が食養生、肉食を勧めたことで再び健康を取り戻していきます。
正三は死ぬことよりも、生きることの大事を悟り、僧侶に禁じられていた肉食を受け入れたのでした。また、荒行で己一人悟りを開いてどうなるのだ(庶民にこそ広く仏法を説いていかなければいけない)との思いを強くしたのもこの頃でした。
そんな正三の噂を聞きつけ、次第に全国から僧侶、一般庶民、地元の人々など、たくさんの人が訪れるようになりました。寛永9(1632)年には石ノ平に恩真寺を開き、以後、正三はそこを拠点として人々に仏法を説きつつ、様々な相談に応えていきます。
武士や僧侶だけではなく、老若男女を問わず庶民の悩み相談にも広く応じていく。私はここから正三独特の仏教が生まれたといっても過言ではないと思います。
例えば、正三は『万民徳用』という著書で、朝から晩まで仕事に追われる身では仏行はできないと嘆くお百姓さんに対し、心を込めて耕すひと鍬ひと鍬があなたの成長に繋がり、仏の道に叶うことなのだと説いています。
つまり正三は、真心込めて一所懸命働くことは仏道修行と同じことであり、自分の仕事を天職としてひたすら打ち込めば、必ずよりよき人生が待っていると教えているのです。
さらに正三は、お金儲け、商売は卑しいことだと見なされていた時代に、モノを流通させることによって世の中を豊かにする、利潤を得ることは誇るべきことである、ますます正直に、一所懸命商売に打ち込みなさいと説きました。
つまり、商売に正直に打ち込んだ結果としての利潤は善であると説いたのです。これも、当時の価値観としては画期的なものでした。
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