【産経新聞】撤回では済まない曾野綾子氏の差別発言

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「弱さ」を無制限に認めるという間違い

三段階に分けて考えたいと思います。

まず一つ目は「弱さを認める」という考え方を疑うということです。この思想は最近の日本では左右を問わずトレンドであり、例えば「弱さ」を認めるのが正義だというような話が幅広く存在しています。うつ病の人には「頑張れと言ってはいけない」とか「弱さに正直に生きるべきだ」というような言い方です。

ですが、この「弱さ」を無制限に認めるというのは間違いだと思うのです。何故ならば、今回の曾野氏の発言が正にそうだからです。確かに異民族や異文化に対して、日本人は欧州の人びとよりは経験が足りないと思います。ですから、「自分は移民が隣に住んだら上手くやっていけるだろうか?」と考えた時に「難しい」と正直に答える「弱さ」を持っている人はあると思います。

それを肯定してしまうと、結果的に「差別はしないが、面倒だから隔離はして欲しい」という意見を認めることになってしまいます。心のあり方として「弱さを認める」という態度の限界がそこにはあります。例えば、慣れない異文化を持った隣人と快適に共存するのは「大変」かもしれませんが、そのことを「イヤだ」と思ってそう主張してしまう「弱さ」は社会として認めるわけには行かないのです。

そう考えると、人間が生きていく上で「必要な強さ」ということ、もっと言えば「与えられたい」という弱さではなく、「与える側に回りたい」という強さというのは、異なる存在が共存する社会を構成する上で不可欠なものだということが分かります。

言い換えれば、現代のように「ほぼ無制限に」この「弱さ」を肯定するのではなく、必要な「強さ」を育てていくという方向に、時代の流れ、あるいは教育のあり方を変えていく必要があると思います。この「強さ」と「弱さ」の論議がまず必要です。

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