反動勢力が暴力的に幕府を打倒し国家を乗っ取った「明治維新の真実」

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12月6日、国会で行った所信表明演説の中で、明治維新を戦後高度成長とともに「日本が起こしてきた奇跡」とした岸田首相。しかしその扱いを巡っては、「薩摩や長州の志士たちによるテロ」とする見方もあるなど、大きく評価が分かれるものとなっています。かような明治維新を改めて深く考察しているのは、ジャーナリストの高野孟さん。高野さんは自身のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』で今回、津田左右吉の著書を読み解く形で「維新の真実」を探るとともに、この国を誤らせ続けてきた根源を深く掘り下げています。

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※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2021年12月6日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

この150年、日本に別の生きる道筋はなかったのか?/津田左右吉『明治維新の研究』を読む

津田左右吉『明治維新の研究』(毎日ワンズ、21年11)が好評で、版を重ねているという。津田にまとまった明治維新論の一冊があるわけではないが、毎日ワンズ社が「著者が昭和22年から最晩年〔1961年没〕に至るまでに月刊誌等に発表した明治維新に関する論文を集め、新たに編集したもの」である。根本趣旨は鮮烈で、帯に書かれているように「薩長史観vs津田史学/「明治維新とは一口にいうと、薩長の輩が仕掛けた巧妙な罠に征夷大将軍がかかって了ったということである」というにある。

150年前から成長していない薩長史観的な思考

この書が今時売れている理由はよく分からないが、私としては大変喜ばしいことである。

なぜなら、明治維新から150年余り、薩長主導の大日本帝国主義の思考様式を未だに超克することができないでいることが、この国が抱えている不幸の根源であって、そこを捲り返すには、司馬遼太郎の『竜馬が行く』や『坂の上の雲』に代表される薩長ベタ褒め翼賛史観を徹底的に吟味し直すことが必須だからである。

これは、単に歴史マニアの懐古趣味の話ではなく今日の問題に直結している。例えば、本誌が前号で大平正芳元首相の「21世紀への提言」の根底にある時代感覚として「過去には西欧化、近代化、工業化による経済成長が強く要請される時代があった。そこではそれぞれの要請の内容が明らかで、目標とすべきモデルがあった。……明治以来のこのような状態は、主として対外的劣等感から生まれ、時にはそれを裏返した異常な独善的優越感ともなった」との一節を引用し、そのような100年単位の時代観や文明論が、せっかく宏池会の系譜を引きながら岸田文雄首相には欠けていると指摘した。

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あるいはまた、薩長藩閥政治の最悪の末裔である安倍晋三元首相が、12月1日のシンポジウムにオンライン参加して「尖閣諸島や与那国島は台湾から離れていない。台湾有事は日本有事であり、日米同盟の有事でもある」などと、米日台連合で中国と戦争を覚悟するかの戯言を吐いているけれども、これは158年前に長州藩が下関海峡を通過する外国船に砲撃を加え翌年コテンパンに報復された頃の単純素朴な攘夷論の低劣な知的レベルをこの人らが今なお引きずっていることの証左である。

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