アパレルや雑貨ブランド「3COINS」を展開するパルグループHD<2726>が、2025年2月期決算を発表。売上・営業利益は過去最高を更新し、特別損失を除けば全体として好調な成績となった。注目すべきは、社員が発信するSNSを活用したマーケティングと、EC比率が4割を超える衣料事業、さらに「3COINS」の積極出店戦略だ。物価上昇の時代にフィットしたビジネスモデルで、他社にはない成長軌道を描いている。(『 元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」 元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」 』澤田聖陽)
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プロフィール:澤田聖陽(さわだ きよはる)
政治経済アナリスト。国際証券(現:三菱UFJモルガン・スタンレー証券)、松井証券を経て、ジャフコ、極東証券にて投資業務、投資銀行業務に従事。2013年にSAMURAI証券(旧AIP証券)の代表に就任。投資型クラウドファンディング事業を立ち上げ拡大させる。現在は、澤田コンサルティング事務所の代表として、コンサルティング事業を展開中。YouTubeチャンネルにて時事ニュース解説と株価見通しを発信している。
売上・利益ともに絶好調
4月8日、アパレル事業や雑貨店「スリーコインズ(3COINS)」を展開するパルグループホールディングス(パルグループHD)は2025年2月期の決算を発表した。
決算数値は以下のとおり。
売上:207,825百万円(前年同期比7.9%増)
営業利益:23,656百万円(前年同期比27.1%増)
経常利益:23,929百万円(前年同期比27.0%増)
親会社株主に帰属する当期純利益:11,848百万円(前年同期比▲7.8%減)
売上は4期連続で、営業利益、経常利益は3期連続で最高値となった。
純利益は創業者である井上英隆相談役が取締役を退任することによる特別功労金31億円を特別損失として計上したため減益となっている。
同社は同時に2026年2月期の業績予想を発表しており、数値は以下のとおりとなっている。
売上:231,000百万円(前年同期比11.2%増)
営業利益:26,400百万円(前年同期比11.6%増)
経常利益:26,400百万円(前年同期比10.3%増)
親会社株主に帰属する当期純利益:16,850百万円(前年同期比42.2%増)
売上・利益ともに今期も好調が見込まれている。
社員インフルエンサーを使って衣料事業が急成長
同社の事業セグメントは大きく衣料事業と雑貨事業に分けられる。
衣料事業は前期決算では売上127,795百万円(前年同期比106.7%増)、営業利益18,161百万円(前年同期比109.3%増)となっており、業績好調だ。
同社の衣料事業は8割以上がSPA(Speciality store retailer of Private label Apparel)と呼ばれる製造小売事業である。
同社は多ブランド展開をしており、衣料事業だけでも50近くのブランドを有する。
衣料事業の成長のエンジンはインフルエンサーマーケティングとEC(イーコマース)である。
インフルエンサーマーケティングは、いまの時代アパレル企業であればどの企業もやっていると言っても過言ではないが、同社はフォロワー総数2,000万人を超える社員インフルエンサーを抱えており、社員インフルエンサーがSNSから積極的な発信を行い、直接返ってくるお客さまの反応をMD施策にも生かしている。
その結果、単なる売上の増加だけでなく、発注量の適正化を通じて在庫や廃棄商品の削減にもつながっており、利益率の向上にも寄与している。
ECについては前期で53,199百万円(前年同期比109.9%増)と衣料事業全体の売上の41.6%を占めるまでに至っている。
前期はサーバートラブルがあり、目標の600億円には届かなかったが、2026年2月期の業績予想ではネット既存店の成長率を前期比113.2%増としており、今期は600億円を超える想定である。
同社のネット事業はリアル店舗との連携を前提としたOMO(Online Merges Offline)と言われる施策である。
これだけの他業態でリアルとネットの融合を達成している企業は少なく、同社の優位性は当面揺るがないだろう。
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