fbpx

任天堂、株価ピークから半減…今が買い?損切りすべき?長期投資家が見るべき3つの弱点=栫井駿介

「惜しいポイント」その2:ハードごとの「ギャンブル性」

2つ目の惜しいポイントは、経営に極めて強い「ギャンブル性」があることです。

本来、優れた経営とは「ほぼ確実にうまくいくこと」を積み上げていくものです。
しかし任天堂の場合、Wiiが大ヒットした後にWii Uで大失敗し、一時は営業赤字にまで転落しました。
そこからSwitchで復活しましたが、常に「次のハードがヒットするかどうか」で社運が決まるという、ヒヤヒヤする状況を繰り返しています。

PCやスマホのように、OSが更新されても同じソフトを使い続けられる連続性があれば、これほどのリスクは生じません。
しかし任天堂はハードが代わるたびに市場をリセットしてしまいます。
例えばAppleなら、スマホを買わない時期でもApple Musicなどのサービスで継続的に収益を上げる仕組みがありますが、任天堂はそのようなストック型の仕組み作りがまだ弱いと言わざるを得ません。

「惜しいポイント」その3:保守的すぎる経営姿勢とIP活用の壁

3つ目に挙げたいのが、経営陣が保守的すぎることです。

任天堂が大きく評価されるのは、新しい挑戦をした時です。
2016年にスマホでのポケモンGOが流行し、ついにスマホ展開を許可した時や、2021年にユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)にスーパーマリオランドを建設した時、そして2023年に映画「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」が大ヒットした時など、IPをゲーム以外に生かした時にこそ輝きを放ちます。

しかし、現在の古川社長のコメントなどを見ると、任天堂はあくまで「ハードとソフト一体型のゲーム機」を中心とした会社であるという強いこだわりを感じます。
これは手堅い経営とも言えますが、あまりに広がりを欠いています。
例えば、過去の膨大なソフト資産をダウンロード販売でもっとなりふり構わず展開すれば、開発費も原価もかからず非常に効率よく稼げるはずですが、そのような「利益を最大化する」動きにはあまり関心がないように見受けられます。

<サードパーティ比率の低さと、オープンではない開発環境>

この保守性は、ソフトのバリエーションの少なさにも現れています。
任天堂のプラットフォームにおける自社ソフト比率は約7割に達しており、サードパーティ(外部メーカー)のソフトはわずか3割程度です。
PlayStationがほとんど外部ソフトで構成されているのとは対照的です。

自社のIPを育てるという意味では素晴らしいことですが、エンターテインメントの世界では「なぜか分からないけれど大ヒットした」という偶発的な要素が重要です。
しかし、今の任天堂の閉鎖的な環境では、外部の柔軟なアイデアやヒット作を取り込みにくくなっています。
外部の開発者からは「秘密保持が厳しすぎる」「オープンではない」といった声もあり、クリエイターにとって「やりづらい環境」になってしまっている懸念があります。

<内部から漏れ聞こえる閉鎖的な企業文化と人材の課題>

こうした問題は、内部の企業文化にも根ざしている可能性があります。
転職サイトなどの口コミを確認すると、「動きの激しい業界にありながら保守的で動きが遅い」「過去のアセットの切り売りで安泰だが、長期的なビジョンが欠けている」といった厳しい指摘が見られます。

年功序列の報酬制度や、閉鎖的な部署社会といった古い体質が残っており、優秀な人材や価値あるアセットを持ちながら、それを十分に活かしきれていないという、もったいない現状があるようです。

自由活達な文化こそが新しい遊びを生み出す源泉であるはずですが、守りの姿勢が強すぎるために、発展の余地を自ら狭めてしまっているように感じられます。

まとめ

任天堂には、現在の保守的な姿勢を改めてIPをフル活用すれば、もっと儲かる会社になれるという巨大なポテンシャルがあります。
Switch2の普及後、ソフトが売れ始める時期には、再び大きな利益を生む流れも期待できるでしょう。
実際、Switch発売から業績のピークまでには数年のタイムラグがありました。
今後、ソフトの売れ行き次第で株価が回復してくる可能性は十分にあります。

しかし、現在のあまりに保守的な経営スタイルは、株式市場の期待とは必ずしも一致していません。
もし今、含み損を抱えているのであれば、一度冷静にリセットして考えてみる必要があるかもしれません。
これから買いたいと思っている人は、「どうなれば任天堂は上がるのか」という具体的なイメージが自分の中で描けた時に決断すべきでしょう。

任天堂は素晴らしい夢を届けてくれる企業ですが、投資対象として見た時には、その「伝統的で保守的な日本企業」としての側面も無視できません。
株主として、ただ配当や利益を求めるだけでなく、IRページなどを通じて「こうすればもっと良くなる」というユーザー視点の声を届けることも、重要な投資活動の一つです。
そのような対話を通じて企業が大きく変わる兆しを見せた時こそ、真の投資チャンスが訪れるのかもしれません。


つばめ投資顧問は、本格的に長期投資に取り組みたいあなたに役立つ情報を発信しています。まずは無料メールマガジンにご登録ください。またYouTubeでも企業分析ほか有益な情報を配信中です。ご興味をお持ちの方はぜひチャンネル登録して動画をご視聴ください。

※上記は企業業績等一般的な情報提供を目的とするものであり、金融商品への投資や金融サービスの購入を勧誘するものではありません。上記に基づく行動により発生したいかなる損失についても、当社は一切の責任を負いかねます。内容には正確性を期しておりますが、それを保証するものではありませんので、取り扱いには十分留意してください。

【関連】なぜバフェットは「守り」に入る?現在の株価は高すぎ?長期投資家が注視すべき市場のシグナル=栫井駿介

image by:yu_photo / Shutterstock.com
1 2

バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』(2026年5月30日号)より※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

無料メルマガ好評配信中

バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問

[無料 ほぼ 平日刊]
【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。

いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー