■マクセル<6810>の業績動向
1. 2026年3月期の業績概要
2026年3月期の業績は、売上高が129,429百万円(前期比0.3%減)、営業利益が7,891百万円(同15.3%減)、経常利益が8,601百万円(同12.0%減)、親会社株主に帰属する当期純利益が8,260百万円(102.0%増)と、減収減益となった。期初予想比でも、売上高で7,071百万円、営業利益で2,109百万円の未達と、やや厳しい決算だった。なお、親会社株主に帰属する当期純利益は連結子会社の持分譲渡に伴う特別利益により大幅に増加し、期初予想に対しても超過達成となった。対米ドルの平均円レートは151円だった。
グローバル経済は、米国の関税措置や中東情勢の悪化など、景気への影響に注視が必要な状況となった。同社の事業環境としては、一次電池やハイブリッド車向け産業用部材の販売は好調に推移したものの、一部原材料費の高騰や半導体関連製品の販売回復遅延、米国の関税措置の影響を受けた。
このような状況下、売上面では、医療機器用やインフラ用途を中心とした一次電池や、塗布型セパレータなどの産業用部材が好調に推移し、光学・システムのライセンス収入も増加した。しかし、二次電池や半導体関連製品、健康・理美容製品の販売減少、一部原材料費下落に伴う販売価格の低下などにより全体で減収となった。為替は、通期では円高となったが、月別のレート変動の影響によりプラス効果となった。利益面では、半導体関連製品や健康・理美容製品の減収に加え、銀など原材料費の高騰、固定費の増加や棚卸資産評価損の計上などにより売上総利益率が低下、販管費をほぼ横ばいに抑えたものの営業減益となった。期初予想との比較で未達となったのは、下期以降の銀価格の急騰、工業用ゴム製品や半導体関連製品の販売回復遅延、棚卸資産評価損の計上、健康・理美容製品における上期の米国の関税影響などが要因である。
一次電池の販売は好調も原材料費の急騰が全社利益を圧迫
2. セグメント別の業績概要
セグメント別の業績は、エネルギーが売上高42,458百万円(前期比微増)、営業利益2,065百万円(同13.5%減)、機能性部材料が売上高32,614百万円(同2.6%増)、営業利益1,467百万円(同25.8%増)、光学・システムが売上高36,413百万円(同1.3%増)、営業利益3,540百万円(同19.9%減)、価値共創事業が売上高17,944百万円(同8.6%減)、営業利益819百万円(同39.1%減)となった。期初予想比では、一次電池が好調だったエネルギー以外、業績未達となった。なお、地域別売上高は米国が同3.5%減、欧州が同4.0%増、アジア他が同8.1%増、国内が5.1%減となり、海外の構成比が若干増加して53.4%となった。
セグメント別の詳細としては、エネルギーでは、二次電池が角形LIB※の生産終了で減収となった一方で、一次電池はガスや水道などインフラ向けの円筒型電池や、医療機器用、車載用のコイン形を中心に好調に推移した。利益面では、クオーツ時計や玩具などに向けたボタン形の酸化銀電池の原価が、特に下期に起きた銀価格の急騰を受けて上昇した。同社は原価の高騰に対しては価格反映で対応するというポリシーを持っているが、異常な急騰だったため価格反映の間にタイムラグが生じ、一次電池は増収減益となった。なお、小型電池事業強化のため、村田製作所<6981>から一次電池事業を譲受した。
※ LIB(Lithium-Ion Battery):リチウムイオン二次電池。なお、一次電池は使い切りタイプ、二次電池は充電して繰り返し使用する電池。
二次電池は、角形LIBの生産終了により減収・損失縮小となった。全固体電池は、コイン形全固体電池「PSB2032」を開発、大手メーカーなどによる採用数の増加に加速がついたが、まだ売上規模が小さくカバーしきれなかった。ただし、小型の全固体電池に関しては競合がほとんどなく、耐熱性など安全性の面で優れていることから将来性が大いに期待されており、高容量化や高耐熱化に向けた開発を加速している。期初の営業利益予想に対しては、車載用や医療機器用が好調だったため過達となったが、銀価格の急騰により期末に向けて利益をやや圧迫された格好である。
機能性部材料では、粘着テープにおいて建築・建材用や半導体製造工程用テープがけん引して増収増益、産業用部材がハイブリッド車向けの塗布型セパレータが好調で、全体として増収増益となった。期初営業利益予想に対しては未達となったが、これは、建築・建材用、半導体製造工程用テープを中心におおむね計画どおりだったものの、工業用ゴム製品の回復がやや遅延したことが要因である。工業用ゴム製品の業績動向について、2025年3月期は製品ミックスの悪化や天然ゴム価格上昇により苦戦、2026年3月期は回復を見込んだが、価格反映は進んだもののミックスの改善が想定どおりに進まなかったようだ。
光学・システムでは、半導体関連製品が減収となったものの、車載光学部品とライセンス収入が増加した。同社の半導体関連製品は、AI向けなどの特殊用途よりも汎用タイプが多く、半導体市場低迷の影響をストレートに受けたため売上高が減少し営業利益も減益となった。車載光学部品は、新規開発の端境期の中でも増収を確保したが、既存品の販売価格下落などにより減益となった。端境期の中でも増収を確保したのは、2026年3月期の下期から次世代ヘッドランプレンズの出荷が始まったことによる。なお、端境期の原因となったビューカメラなど車載カメラレンズユニットも、次期中期経営計画期間に大型新製品をリリースできる見込みで、端境期を解消しそうである。期初の営業利益予想に対しては、半導体関連製品の販売回復遅延と棚卸資産評価損の発生により未達となった。
価値共創事業では、電設工具は好調だったが、健康・理美容製品が苦戦した。電設工具は、国内及び北米向けを中心に好調で増収増益となった一方で、健康・理美容製品は、上期に発生した米国の関税影響により出荷数量が減少したことを主因に減収減益となった。健康・理美容製品の米国向けは、第3四半期以降平年並みに戻ったが、上期の数量減少をカバーしきれなかった。期初の営業利益予想に対しては、健康・理美容製品の米国の関税影響の分が未達となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田 仁光)
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