2026年7月23日に開催された、株式会社パシフィックネット個人投資家向けオンライン会社説明会の内容を書き起こしでお伝えします。
会社概要
上田雄太氏(以下、上田):みなさま、はじめまして。株式会社パシフィックネット代表取締役社長の上田雄太です。本日はご参加いただき、誠にありがとうございます。
本日は初めての方もいらっしゃるかと思いますので、まず当社がどのような会社であるのか、どのように収益を上げているのか、そしてどのように今後成長していくのかについて、順を追って丁寧にご説明します。どうぞよろしくお願いします。
当社の概要についてご説明します。当社は1988年に創業し、今期で39期目を迎えています。事業は、ITサブスクリプション事業、ITAD事業、コミュニケーション・デバイス事業の3つのセグメントで構成されています。
直近の売上高は104億5,700万円で、従業員数は283人です。拠点は、北は札幌から南は福岡までの全国7拠点にわたり、法人向けのITサービスを提供しています。
当社の事業領域

当社の事業領域についてご説明します。当社のお客さまは、企業の情報システム部門です。私たちのミッションは、企業のパソコン運用管理業務を支援し、情報システム部門の負荷を軽減して時間を創出することにあります。
企業のパソコンは、購入して終わりではありません。スライドのサイクル図には、パソコンの運用管理の工程が1番から6番まで示されています。パソコンは調達後に個人ごとの設定を行い、3年から4年にわたり運用・保守を行います。その後、入替を行い、データ消去を実施した上で適正処理を行います。
運用管理にはさまざまな工程があり、それらを当社がワンストップで導入から運用、処分まで一括支援することが、当社の最大の特徴です。
沿革・事業構造の変化

沿革と事業構造の変化についてご説明します。当社は創業当初「パシフィックレンタル」という社名で、パソコンの短期レンタル事業からスタートしました。
その後、「Windows 95」の発売など、パソコンが市場に浸透していく過程において、パソコンのリユース・リサイクル事業も開始しました。全盛期には、秋葉原を中心に12店舗の個人向け中古パソコンショップを開設し、成長を遂げました。
大きな転換点は2016年から2017年にかけてです。全国にあった店舗を一斉に閉鎖し、BtoB向けに経営資源をすべて集中させました。そのタイミングで、現在のIT機器サブスクリプションやITサービスを行う会社へと転換しました。
「Windows 95」「Windows XP」「Windows 7」など、これまでに何度かWindows OSの更新という大きな事業機会がありましたが、これが会社を大きく前進させる要因となりました。
お客様(情報システム部門)が抱える課題

当社のお客さまが抱える課題についてです。当社のお客さまには、中堅企業と大企業というボリューム層があります。中堅企業は従業員100名以上2,000名以下の企業を指し、大企業は2,000名以上のいわゆるエンタープライズ企業を指します。
これらの企業には、人手不足という共通の課題があります。シンクタンクの発表によれば、企業のIT人材不足は非常に深刻であり、2030年には79万人が不足するとされています。
当然、IT人材の1人である情報システム部門でも、少人数で多くの業務を担うマルチタスクが日常化しています。そのため、業界では「1人情シス」という表現も普通に使用されています。
また、パソコンの管理や運用の負担も年々増加しています。特に大企業では、大量のパソコンを取り扱うことによるデータ消去やセキュリティ対応といった独自の課題が生じています。
このIT人材の不足と業務負荷の増大を背景に、現在は企業のパソコン運用管理を外部に委託するアウトソーシングのニーズが拡大しています。当社の事業は、これらの課題を解決するものです。
事業構成

当社の3つの事業についてご紹介します。まず、ITサブスクリプション事業では、パソコンの中長期レンタルやIT部門向けのITサービスを提供しています。主な顧客は、中堅企業を中心とする法人企業です。収益の特性として、月額の使用料とITサービスの収入を継続的に積み上げるストック型の収益モデルとなっています。こちらの事業の位置づけは、安定成長を支える中核事業であるとともに、売上成長の基盤です。
ITAD事業は、企業から出てくる使用済みIT機器の回収、データ消去、中古市場での再販を請け負っています。この事業の主な顧客は、ITサブスクリプション事業とは異なり、大企業が中心となっています。収益の特性としては、パソコン回収時のサービス収入と、再販利益を得る、いわゆるフロー型の収益となっています。特徴としては、高い収益性と資源循環を担う事業です。
最後に、コミュニケーション・デバイス事業です。こちらは「イヤホンガイド」という無線機の販売やレンタルを手掛けています。ニッチな市場ではありますが、業界トップのシェアを持ち、小規模ながらも高収益を確保する事業となっています。
当社では、ITサブスクリプション事業とITAD事業が主力事業です。
主力2事業の収益モデル

主力2事業の収益モデルについてご紹介します。
まず、ITサブスクリプション事業については、契約が開始されるタイミングでパソコンを調達します。この利用料は3年から4年という長期間にわたり、月額で集金します。また、契約期間中にITサービスを付帯することで、クロスセルが可能となっています。収益の特徴としては、長期契約により売上を積み上げやすい、ストック型の収益となっている点です。
契約が終了したパソコンについては、そのまま廃棄することなく、ITAD事業が引き継ぎます。ITAD事業では、パソコンを回収した後、データ消去や付随する役務を行い、作業収入を得ます。そして、その次にグレーディングや査定を適切に実施し、最適な販路で再販を行います。
まとめると、ITサブスクリプション事業で利用されたパソコンは、契約終了後に付加価値を付けた状態でITAD事業によって再販・再利用されます。1台のパソコンから複数の収益機会を生み出すこと、これがこの2つの事業の最大の特徴です。
収益構造の転換

この2つの事業の成長を通じて、収益構造がこの9年間で大きく転換しました。具体的には、2017年5月期の売上は46億4,300万円でしたが、2026年5月期には104億5,700万円まで大きく伸長しました。
ストック収益も2017年5月期は20パーセントしかなかったものの、現在は68パーセントまで伸びています。このように、9年間で収益構造が大きく逆転し、会社はストック収益という安定成長モデルへと大きく移行しました。
競争優位性

当社の強みについてご説明します。当社の1つ目の強みは、全国7拠点に営業と物流機能を持ち、札幌から福岡まで全国で均一のサービスを提供できることです。
特に、当社の従業員の約45パーセントがエンジニアリングに精通した技術者であり、これは当社と同様にパソコンのサブスクリプションを提供する同業他社との差別化の大きな要素となっています。大規模案件から小規模案件、テクニカルな案件まで、これらの技術者がすべて対応しています。
2つ目の強みは、創業38年を経て1万5,000社との取引実績がある点です。大手金融機関や大企業をはじめ、非常に長期間にわたりお付き合いをいただいています。
3つ目の強みは、品質です。当社の主力事業であるデータ消去においては、国際基準に準拠したデータ消去技術とISMSに準じた管理体制を整え、安心してご利用いただけるサービスを全国で提供しています。
2026年5月期 連結業績

直近の連結業績です。売上高は104億5,700万円で、前期比29.1パーセントの増加となりました。
営業利益は13億9,100万円で、前期比65.2パーセントの伸びとなりました。売上高・営業利益ともに過去最高を記録しています。特に、売上高は7期連続で増収、営業利益は4期連続で増益を達成しました。
2026年5月期には、「Windows」OSの更新という大きな事業機会があり、ストック収益が着実に積み上がりました。また、ITAD事業のフロー収益拡大も大きく進展しました。これらの成果により、安定成長を支える収益基盤がさらに拡大しています。
2026年5月期 事業別業績

事業別の業績についてご説明します。まず、ITサブスクリプション事業の売上高は、前期比22.4パーセント増の71億6,100万円となりました。これは更新需要の増加によるストック収益の大幅な積み上げが要因です。
ITAD事業の売上高は前期比59.8パーセント増、セグメント利益は前期比83.6パーセント増と大きく伸びています。このITAD事業が大きな利益成長を牽引しました。
コミュニケーション・デバイス事業のセグメント利益は1億1,100万円で、前期比70.5パーセントの増加となりました。こちらはインバウンドをはじめとする旅行需要の回復を背景に、高収益事業として貢献しました。
サブスク資産の状況と稼働率

サブスクリプション資産の状況と稼働率です。ITサブスクリプション事業では、サブスクリプション資産の資産残高と稼働率をKPIとしています。
サブスクリプション資産の推移を見ると、2026年5月期には192億7,800万円となり、2020年5月期と比較して4.1倍と大きく伸びています。また、その資産が適切に稼働しているかを併せて管理しており、直近2期の稼働率は80パーセントを維持しています。
今後も受注や事業見通しに基づき、機動的にサブスクリプション資産を取得し、稼働率の管理を進めていきます。
営業利益率・ROEの推移

営業利益率とROEの推移です。営業利益率は前期比2.9ポイント増加の13.3パーセント、ROEは前期比7.0ポイント増加の23.5パーセントとなりました。
今後も利益成長と資本効率の両立を図り、企業価値のさらなる向上を目指します。
2020年のWindows EOS更新時との比較

今から約6年前に、「Windows 7」のサポート終了に伴う大きな更新需要がありました。こちらのスライドは、それと今回の「Windows 10」との比較を示しています。
2020年のパソコン出荷台数は1,097万台でしたが、今回は921万台となり、市場自体が前回比で16パーセント縮小しました。
当社の売上高は、ITサブスクリプション事業が前回比3.3倍、ITAD事業が前回比1.6倍となり、セグメント利益はサブスクリプション事業が前回比2.6倍、ITAD事業も前回比2.6倍と、収益力が大幅に向上しました。
特筆すべきは、1人あたりの生産性です。2020年と比較して、売上高は1.9倍、営業利益は2.7倍となり、生産性の向上を実現しました。これにはサブスクリプション事業の拡大とITAD事業の販売単価の向上、そして収益力の向上が寄与したことが、今回の大きな評価ポイントであると考えています。
2027年5月期 連結業績予想

2027年5月期の連結業績予想です。更新需要の一巡後も増収増益を計画しています。
売上高は前期比6.1パーセント増の111億円、営業利益は前期比4.2パーセント増の14億5,000万円、経常利益は前期比0.6パーセント増の13億円を見込んでいます。
営業利益と経常利益の差分については、昨今の金利上昇を見込んでいます。
2027年5月期 連結業績予想の前提

今回の連結業績予想を立てる上での前提条件についてご説明します。
各事業セグメントの見通しについて、ITサブスクリプション事業とITAD事業は堅調に推移し、コミュニケーション・デバイス事業は好調に推移すると考えています。
まず、ITサブスクリプション事業については、昨今のパソコン価格の高騰により、購入からサブスクリプションという新しい手段への移行需要が拡大していくと想定しています。一方でリスクとしては、パソコン価格の高騰や納期遅延による調達リスクが挙げられます。
ITAD事業についても、同様に新品パソコン価格の上昇により、中古パソコン価格が高騰している状況です。そこが1つの事業機会であると考えています。リスクとしては、今回のWindows OSの更新需要の反動により、パソコンの入荷台数が減少することが挙げられます。
全社の前提として、今期も引き続き戦略的な投資を続ける予定です。総合的には、外部環境を注視するという前提でいます。
今後の方向性

今後の当社の成長戦略です。当社の今後の方向性は2つあります。
1つ目は、既存顧客へのクロスセルや新規開拓を目的としたマーケティング活動を通じて、顧客接点や顧客基盤をさらに拡大していくことです。
2つ目は、これまではパソコンを中心とした情シス支援を行ってきましたが、パソコンを入り口として、ITサービスをはじめとした、より付加価値の高いサービスを拡充することで、お客さまへの提供価値を向上させていくことです。
この提供価値と顧客基盤を掛け合わせることで、より付加価値の高いITサービス企業への進化を目指しています。そして、2027年5月期からはITAD事業をサーバー分野に拡大し、新たな領域へ挑戦します。
中長期の成長戦略

この成長方向性における、具体的な戦略についてご説明します。
1つ目は、処理能力の拡大です。今年6月、神奈川県相模原市にテクニカルセンターを開設しました。この施設は、総面積がこれまでの施設の約2倍となる2,000坪を有し、月間10万台の入荷対応能力を誇る過去最大のロジスティクスセンターです。
これにより、全国各地からの多様な案件に対応可能な体制を構築しました。また、今後進めていくサーバーなどの取り扱いにも対応できるよう、今後この機能をさらに強化していく予定です。
2つ目は、提供価値の拡大です。現在主力としているパソコンを中心としたソリューションから、より広範なITサービスやBPOの拡充へと展開していきます。具体的には、ネットワークやセキュリティ、さらに情シスBPOなど、パソコンの課題にとどまらず、IT部門全体の課題を解決するサービスを強化していきます。
3つ目は、新規領域への展開です。今年7月にニュースリリースを発表したとおり、昨今の旺盛なAI需要の高まりを受け、全国各地にデータセンターが新設されています。これまで企業の投資対象はパソコンが中心でしたが、今後はAIやサーバーへの投資が確実に進むと見込まれます。
今後、全国に広がるAIのデータセンターは、いずれ撤去や新しいものへの切り替え、そしてデータ消去といったニーズが必ず生まれると考えています。当社はITAD事業において、データ消去や再販のノウハウを有しています。今後必ず顕在化する、この高付加価値な中古市場に向けて、今から実績を積んでいく方針です。
株主還元方針

株主還元方針です。今期は普通配当57円に加え、創業40年目を記念した記念配当8円を実施し、年間配当は65円を予想しています。配当方針として、配当性向30パーセント以上およびDOE5パーセント以上を目標としています。
累進配当は約束していませんが、配当の累進性を意識しており、10期連続の増配を目指していきたいと考えています。今後も継続的な還元を実施していきます。
本日お伝えしたいこと

当社は、パソコンの導入から運用・処分までをワンストップで支援するユニークな事業を展開しており、これにより企業のIT部門における人手不足や業務負荷の軽減に貢献したいと考えています。
また、当社は今から10年前に業態転換を行い、ITサブスクリプション事業を軸とした安定性の高い収益基盤を構築しました。今後もITサブスクリプション事業とITAD事業を中心に、継続的な成長を実現していきます。
その結果、収益力と生産性が向上し、事業体質は大きく進化しました。前回の「Windows」のEOS時の業績を超える収益力を実現し、業績は過去最高となりました。
最後に、今後目指す方向として、パソコンを起点にITサービスやBPO、より付加価値の高い領域への進出を計画しています。引き続き、中長期的な企業価値の向上を目指していきます。
質疑応答:ITサブスクリプション事業の拡大と顧客増加の要因について
kenmo:今から約10年前に開始された構造改革を経て、現在ではストック収益が大きく伸びています。これは、ITサブスクリプションのニーズはもともと存在していたものの、提供する会社がいなかったということなのでしょうか? それとも御社の「かゆいところに手が届く」サービスが口コミで広まり、お客さまから支持を得たのでしょうか? どのようにお客さま企業が増えたのか教えていただけますか?
上田:まず、日本におけるパソコンの調達方法についてですが、全体を「100」とすると、購入が大半を占め、次にリースとなります。当社が提案しているサブスクリプションは約10パーセントにとどまっています。
そもそも、日本では長い間、パソコンを資産として保有する文化が根づいていました。しかし、近年では「初期コストを抑えながら利用するサブスクリプション」という新しい選択肢が次第に浸透してきました。
私たちが、購入でもリースでもない第3の選択肢としてサブスクリプションを提案できたことで、お客さまから「すごくユニークな事業をしている」と受け止められた可能性があると考えています。
「リースとサブスクリプションは何が違うのか?」というご意見をいただくことがありますが、リースは基本的にファイナンスに特化した仕組みです。具体的には「パソコンを貸し出しますので、その利用料金を4年間毎月按分してお支払いください」というのがリースの本質です。
一方、当社ではパソコンの貸出だけでなく、貸出を通じて、もともとIT部門の方々が担当していた日々のパソコン運用管理、データ消去、トラブル対応といったお客さまの業務に入り込むようなサービスも併せて提案しています。そのため、お客さまには単なるレンタルサービスではなく、情シス業務を一緒に支援してくれるパートナーとして認識されることが多いと思います。
また、昨今の人手不足の影響もあり、購入でもリースでもない新しい選択肢として評価されています。より付加価値のあるサブスクリプション事業が、現在伸びていると考えています。
kenmo:私も企業勤めをしていたためよくわかるのですが、人が辞めるとパソコンが余ってしまうことがあります。それをどのように処理するか、また、初期化する手間などを考えると、人の出入りが多く、なおかつ情シス部門が不足している企業では、非常にニーズが高いサービスだと思います。
このサービスは、従業員数でいくと、どのくらいの規模感の企業に多く利用されているのでしょうか?
上田:私たちは中堅企業と呼んでいますが、おおむね従業員が100名以上から2,000名程度の企業で、情シスが足りていないところがほとんどです。「1人情シス」と言われていますが、1人のIT部門の担当者が約100人を管理するのが、基本的な企業の人員構成となっています。
kenmo:まだまだ市場規模はあるのでしょうか?
上田:調達方法を見ると、サブスクリプションはまだ10パーセント程度にとどまっています。そのため、残りの9割については成長の余地があると考えています。
また、私たちは今後、パソコンに限らず、よりお客さまの業務負荷を軽減するITサービスを提案することで、結果としてサブスクリプションにおける当社のアドバンテージが向上すると考えています。
質疑応答:基礎的な収益力を測るためのKPIについて
kenmo:業績について、昨期は期中に何度も上方修正を発表され、非常に好調であった印象を受けます。一方で、昨期には一時的なスポット案件も存在したかと思います。
このような一過性を除いた基礎的な収益力について、個人投資家はどのようなKPIで測定すればよいのか、また、今後成長していく可能性や注視すべきポイントについて教えていただけますか?
上田:基本的に、KPIは3つあると考えています。1つ目は、ITサブスクリプション事業が生み出すストック収益です。これが確実に伸びているかをご確認いただきたいと思います。
2つ目は、資産の増加と稼働率です。当社は有利子負債を活用して、将来の収益資産であるパソコンを調達しています。そのため、資産が積み上がっていくことが重要だと考えていますが、その資産が確実に現金を生み出しているかも重要ですので、稼働率をしっかりと注視します。
3つ目は、キャッシュフローです。私たちが積み上げている資産が十分に稼働し、収益を生んでいるかどうかが問われます。
以上のように、KPIとしてはストック収益、稼働率、営業キャッシュフローが最も注目すべき指標であると考えています。
kenmo:現在の稼働率は約80パーセントですが、これをさらに上げていける余地はありますか?
上田:上げる余地はあります。当社は現在でこそ稼働率が80パーセントですが、事業を始めた当初は70パーセント台や60パーセント台の時期もありました。
その当時は、資産の運用や、たまに発生する不稼働在庫のタイミングごとの処分などの面で経験値が不足しており、さまざまな課題に直面しました。しかし、最近ではこれらの点において精度が向上してきています。
もちろん、稼働率が100パーセントになると余裕はなくなってしまいますが、稼働率を85パーセント、さらには90パーセントにまで引き上げることは十分可能であると考えています。
質疑応答:2027年5月期業績予想で慎重にみている点について

kenmo:今期の業績予想は、2027年5月期は売上高111億円、営業利益14億5,000万円で増収増益を予想されています。
前期よりやや成長率は落ち着く計画となっていますが、今回の予想で慎重に見ている部分やリスク要因、また上振れ・下振れにつながる要素などがありましたら、お聞かせいただけますか?
上田:まず慎重に見ている点としては、パソコンのOS更新需要が一巡することです。パソコンの出荷台数に関する統計は出ていますが、実際にお客さまがどのように感じているかは別の話です。そのため、引き続き定期的な更新を促すためにも、常にリサーチを続けていく必要があると考えています。
また、更新需要が一巡した後の今年も、人的資本への投資を引き続き行っていく予定です。これらの投資に関しては業績とのバランスを見ながら慎重に判断していきたいと考えています。
質疑応答:パソコン価格高騰による影響と対応策について

kenmo:「足元では、半導体不足やメモリの値上がりで、パソコンの価格自体が上がっています。御社にはメリットとデメリットがそれぞれあると思いますが、パソコンの値段が上がることによる御社の事業への具体的な影響・対応策などを教えてください」というご質問です。
上田:影響としては、現在、パソコン価格が毎月高騰しており、その結果、パソコン調達時の「購入」に対するハードルが大幅に上がっていると思います。このような状況から、当社が提供する初期投資を抑えたサブスクリプション利用への移行需要は拡大する可能性があると考えています。
一方で、パソコン価格が高騰すると、それをどの程度価格転嫁できるかというリスクも存在します。
もちろん、お客さまのIT投資予算には限りがありますので、その点は慎重に見極める必要があります。ただし、仮にパソコン価格の高騰分をすべて価格転嫁できなくても、代わりにお客さまの運用負荷を軽減するようなITサービスを積み上げることで、トータルでお客さまのコスト削減につなげていけると考えています。
対応策としては、パソコンの価格が高騰しているだけでなく、一部で供給難も発生しているため、今後は需要予測に基づき在庫の確保と調達先の多様化を進めていこうと考えています。
また、パソコンの価格が上昇している現状を受け、当社には多くのエンジニアが在籍していますので、価格以外の付加価値によってトータルで選ばれることを目指したいと思います。
質疑応答:採用方針について
kenmo:「今後の採用計画について、人手不足の環境下ですが、人材採用は計画どおりに進んでいますか? 採用面で、独自に工夫していることがあれば教えてください」というご質問です。
上田:採用は通年で行っています。当社はお客さまに対して人手不足を解決するソリューションを提案していますが、当社自体も人材が潤沢なわけではありません。そのため、成長に必要な人材は適宜、ハイクラス人材を含めて採用を行っています。
採用は社長の特別ミッションとしており、私自身が特にハイクラス人材に対しては個別にスカウトを送ったり、面談を重ねたりして、会社の成長を担う人材を集めるように動いています。
kenmo:ハイクラス人材とは、どのような人材でしょうか?
上田:ハイクラス人材とは、具体的にはいわゆる部長職以上の管理職を指しています。マネジメントや、より高い意思決定を行える人材を集めるようにしています。
質疑応答:今後の配当計画について
kenmo:「配当について、2027年5月期は普通配当57円で、創業40年目の記念配当8円が加わって、年間65円の配当予想となっています。今後に関しても、利益成長に合わせて安定的に普通配当は増やしていく計画なのでしょうか?」というご質問です。
上田:当社は、利益成長に応じて安定的に配当を行う方針で、累進性を意識しています。過去に9年連続で増配してきた実績があり、今期も増配できるよう、業績とキャッシュに見合ったかたちで株主のみなさまに還元していきたいと考えています。
質疑応答:金利上昇局面における投資採算性と財務バランスの方針について
kenmo:今期の業績に関連して、金利についてお話がありました。先ほどの3つの指標の中でキャッシュフローについても言及がありましたが、サブスクリプションなどへの成長投資によりフリーキャッシュフローがマイナスとなっており、有利子負債も活用されています。
今後の金利上昇局面において、投資の採算性や借入、自己資本比率のバランスをどのように管理していく方針でしょうか?
上田:ご指摘のとおり、当社は営業キャッシュフローと有利子負債を活用して、将来の収益を生む資産であるパソコンの資産を積み上げています。
フリーキャッシュフローについて、この数年間はマイナスが続いていますが、資産がそれに応じて積み上がっている点をご確認いただきたいと思います。本日は資料でお見せできませんでしたが、フリーキャッシュフローは一定の水準でマイナスを維持する中、着実に資産の形成が進んでいます。
これらの資産が収益を生み出しているかについては、売上高や営業利益がこれに対応して伸びていることから、健全な利益を生む構造になっていると判断しています。そのため、ITサブスクリプション事業やITAD事業において健全な利益を確保しながら事業を進めています。
さらに、当社では自己資本比率20パーセント以上をはじめとした複数の指標を基に財務規律を設けており、規律の範囲内で投資を実行しています。このため、今後金利が上昇する局面においても基本的な方針は変えず、現行の方針を踏襲していく予定です。
質疑応答:企業向けAIの発達に伴う業績への影響について
kenmo:「企業向けAIの発達は、御社の今後の業績にどのような影響を与えるとお考えでしょうか? 具体的な関連性とともに教えていただけますか?」というご質問です。
上田:当社でも全従業員でAIを活用しており、利用率は8割です。直近の社内での活用状況を踏まえると、年間で1万時間程度の業務時間削減に相当する活用が進んでいると見ています。そのため、今後AIを使わないという選択肢はないと考えています。
最近、私たちが注目しているのは、AI処理に適したNPUを搭載するAI PCです。これまで、パソコンの出荷台数を引き上げるきっかけは、MicrosoftのOSの更新でした。この更新は不定期に行われていましたが、今後はOSの更新ではなく、最新のAIを利用するためにパソコンを入れ替える流れになるのではないかと考えています。
例えば、これまでOSの更新の間隔が5年だったとすれば、AIがどんどん発展することで、今後はパソコンの更新間隔が短くなる可能性があると思います。
シンクタンクの発表によると、2030年頃までには世の中にある法人向けパソコンの約7割がAIパソコンに切り替わるとされています。
AIは今後さらに進化し、より精度の高い利用を求めるためには、最新のCPUや十分なメモリを備えたハイスペックなパソコンが必要となります。そのため、AIの進化は私たちにとってポジティブな要素が多いと現時点では考えています。
kenmo:確かに、「もう自社内だと管理しきれないから、サブスクリプションに任せようか」という企業は、今後増えてくる可能性がありそうですね。
質疑応答:メモリ増設サービスについて
kenmo:「パソコンは、どの性能がボトルネックになるかわかりません。例えば、数年前はAIとブラウザでこれだけDRAMを消費することは予想できませんでした。メモリ増設などのサービスは行っていますか?」というご質問です。
上田:メモリ増設のサービスなどは、従前から行っています。特に昨今、AIを利用する方が増えたことで、より速い演算やAIからのフィードバックを得るためには、最低でも16ギガバイトのメモリが必要とされています。さらに、今後は32ギガバイトが主流となると予想されるため、メモリ増設の需要が増えていくのではないかと考えており、当社も注視しています。
質疑応答:フロー収益とストック収益の比率目標について
kenmo:「今、ストック収益が非常に積み上がってきていて、伸びています。将来的には、ストック収益とフロー収益の比率・割合はどのようなイメージにしていきたいのか、御社の考える適切な比率はありますか?」というご質問です。
上田:この10年間は、まずストック収益がフロー収益を超えることに必死でした。そのため、適正な比率まではあまり考えたことがありませんでした。ただ、現在の7対3ではなく、8対2くらいまでにしたいとは思っています。
ストック収益が積み上がると、数年後には中古パソコンの販売というかたちでフロー収益に跳ね返ってくるため、フロー収益も一定の比率は維持されると考えています。
時期によってはフロー収益が大きく伸びることもあるかもしれませんが、ベースとなるのはストック収益です。最低でもストック収益で販管費を賄える状態を必ず作らなければならないと考えています。
kenmo:確かに、フロー収益とストック収益の両方があるほうが、企業として健全だと思います。
質疑応答:PERや時価総額向上に向けた取り組みについて
kenmo:「今後、PERや時価総額を高めていくために、これから行おうとしている具体的な方策などがあれば教えてください」というご質問です。
上田:先週発表した決算資料でも、資本コストや株価を意識した経営として、企業価値向上の基本方針を定めました。まず、PBRを向上させるためには、ROEとPERの両方を高める必要があると考えています。
今期ROEは23パーセントを超える非常に高い水準で推移しており、今後も収益性と資本効率を意識することで、この水準を維持できると考えています。
一方で、PERは株主のみなさまにとっての期待値でもあります。そのため、今後は本日のようなIR活動を通じて、当社の事業モデルをより深く理解していただき、リスクが少なく、成長可能性の高い会社であることを丁寧にご説明していく必要があると考えています。
そうすることで資本コストの低下が期待でき、最終的にはPBRという株主価値の向上にもつながるのではないかと考えています。
質疑応答:今後の注力領域と課題について
kenmo:現在PERが9倍台であることや、構造改革によりストック収益が非常に伸びていることを踏まえると、いち個人投資家として非常に興味深い投資タイミングではないかと思います。そのような状況下で、今後はどのように成長していくのか、事業成長の見通しが気になるところです。
社長に就任されて、今年で3年目になると思いますが、今後、特にここに注力していきたいという取り組みや、逆に課題として感じている部分について教えていただけますか?
上田:今後注力する部分としては、まず既存事業をさらに深めてお客さまを増やし、成長を図ることです。
また、当社はこれまでパソコンを中心としたソリューションが多かったため、今後はより広い視点から、企業のIT部門の課題を解決するための付加価値の高いサービスを積極的に展開し、価値を高めていきたいと考えています。その上で、付加価値の高い提案が行えるITサービス企業を目指していきたいと考えています。
課題として、当社は中古パソコン事業を長く行っていたため、知名度があまり高くない点が挙げられます。
そのため、当社が提案するパソコンのLCM、特にITサブスクリプション事業のすばらしさを、マーケティングや各種拡販活動を通じて広めていきたいと考えています。認知拡大も重要な取り組みとして、今後も注力していきます。
質疑応答:BPaaSやセキュリティ企業との提携構想について
kenmo:御社のビジネスモデルでは、BPaaSやセキュリティ企業との提携でシナジーが生まれる可能性が高いように思われますが、その点についての構想はありますか?
上田:実は、当社は最終的にBPaaS企業を目指しています。現在、当社が提供しているのは、パソコンというハードウェアとITサービスです。しかし、お客さまが最も求めているのは、IT運用管理の可視化やDXのツールです。
そのため、今後は外部のパートナーとの提携を通じて、お客さま向けの運用管理プラットフォームの提供を目指していきたいと思います。プラットフォームを提供することで、お客さまが当社に業務を発注したり、アウトソースの状況や進捗を管理したりできるツールをご提案できればと考えています。
kenmo:私もそこにはシナジーを感じており、勝ち筋となるのではないかと個人的に期待しています。
質疑応答:海外進出の計画について
kenmo:「今後、海外での事業展開の計画などはありますか?」というご質問です。
上田:海外への進出については、現在のところ計画はありません。私たちは日本市場でまだ業界の3番手グループに位置づけられているため、まずは日本市場で成長し、存在感を高めていくことが重要であると考えています。
ただし、1つの考え方として、外資系企業の日本法人に関しては、新しい提案先として検討に値すると考えています。
質疑応答:新リース会計基準の影響について
kenmo:「新リース会計基準によって、御社のITサブスクリプション事業に対する影響などはありますか?」というご質問です。
上田:新リース会計基準については、貸し手と受け手で異なる点があります。貸し手目線でお伝えすると、当社が取り扱っているパソコン等の商材については、もともと高額なものではありませんので、新リース会計基準に抵触しないとの認識です。
具体的には、米国ドルで5,000ドル以上のものが新リース会計基準の対象となります。おそらくもっと高価な機材やAIデータサーバーのような商材は基準に該当してくると思われるため、バランスシートにインパクトを与えます。ただし、それはお客さま側で影響が出るケースが主だと考えています。
一般的にバランスシートの中でパソコンが占める比率はごくわずかですので、当社では新リース会計基準をそれほどリスクとは考えていません。もしも不動産などを取り扱っている場合には、少し気にする点があるかもしれません。
質疑応答:法人向けパソコン事業における競争優位性について
kenmo:競合や競争優位性について、法人向けパソコンの調達・運用・処分において多くの競合が存在する中で、御社はどのような点で差別化を図り、選ばれているのかお聞かせいただけますか?
上田:ご指摘のとおり、サービスごとに競合他社は存在します。当社の強みは、パソコンの物理的な運用管理および、企業のIT部門が抱える需要を網羅的に対応し、ワンストップで支援できる点です。
特に、当社は全国7拠点に営業部門とロジスティクス機能、エンジニアを配置しており、全国で対応できることが大きな強みとなっています。
パソコンのサブスクリプションサービスを展開している会社は当社以外にも数多く存在しますが、十分な供給力を持つ企業は限られています。
そのため、当社は網羅的なサービス提供と付加価値の追加に取り組むほか、今回新設した相模原の大型テクニカルセンターを活用し、大規模案件から中規模案件まで幅広く対応することで、差別化を図っています。
kenmo:「相模原テクニカルセンター」は、どのような機能を持つ施設ですか?
上田:ITサブスクリプション事業では倉庫の機能を持っています。また、出荷時にはキッティングなどのセッティング作業が発生しますが、そのための生産ラインも備えています。さらに、出荷時のロジスティクス機能も付帯しています。
ITAD事業では、法人や官公庁から定期的に入ってくるパソコンを工場内で仕分けし、データ消去を行います。その後の工程として、グレーディングを経て再販する機能も備えています。
このように、当社が掲げるワンストップ支援のいくつかの工程が、その工場で実現されています。
kenmo:拠点は現在、全国に7ヶ所あると思いますが、今後も増やしていく計画はありますか?
上田:7拠点で沖縄以外の全国を網羅できていますので、現時点では計画はありません。
質疑応答:個人投資家に注目してほしいポイントについて
kenmo:個人投資家の方々に、今後特に注目してほしい点や、「ここをぜひチェックしてください」といったポイントがあれば教えていただけますか?
上田:当社は2026年で上場20周年を迎えました。今後も主力事業を中心に、さらなる成長を遂げていきたいと考えています。
本日ご説明したとおり、主要KPIである、ITサブスクリプション事業のストック収益、当社の収益資産であるパソコン資産の増加、そしてそれが生み出す営業キャッシュフローについては、引き続き注目していただきたいと思っています。
当社は今後、パソコンを入り口として、より高い付加価値を提供できるITサービスを提供する会社を目指しています。また、その業界と当社が定義するLCMの業界において、お客さまから第一想起される会社を目指しています。今後ともご支援のほど、どうぞよろしくお願いします。
質疑応答:今後のM&A戦略について
kenmo:今後、M&Aなどの可能性はありますか?
上田:M&Aも選択肢の1つとして考えていますが、基本的にはオーガニックな成長を目指しています。どちらかといえば、例えば今後サーバー領域に進出する場合、サーバー領域の知見を持つ方を外部から招聘するなど、会社を買収するのではなく、専門知識を持つ人々に協力してもらうかたちで成長戦略を進められればと考えています。
