■イード<6038>の業績動向
1. 2026年6月期の業績概要
2026年6月期の連結業績は、売上高で前期比2.2%減の5,952百万円、営業利益で同50.8%減の226百万円、経常利益で同39.7%減の273百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同1.1%増の311百万円となった。またKPIとしている調整後EBITDAでは同30.6%減の462百万円となった。ネット広告領域のなかでも特に利益率の高い商材が落ち込んだこと、CS事業の受注低迷による収益悪化が主な減収減益要因となり、期初予想(売上高6,400百万円、営業利益600百万円、経常利益600百万円、親会社株主に帰属する当期純利益372百万円)に対しては未達となった。ただ、2026年5月に下方修正した予想(売上高5,800百万円、営業利益230百万円、経常利益250百万円、親会社株主に帰属する当期純利益340百万円)に対しては、売上高と経常利益が上回った。なお、親会社株主に帰属する当期純利益が増益となった要因は子会社のマイケル(株)を吸収合併したことに伴い、繰越欠損金継承による繰延税金資産を計上したことなどから、法人税等調整額が126百万円のマイナス計上となったことによる(前期は61百万円のプラス)。
なお、パズル雑誌事業から前期末に撤退したことによる連結業績への影響額は、売上高で2億円強の減収、営業利益で数千万円の増益要因になったと見られる。また、2025年7月に連結子会社化したエディトは売上高で約2億円、のれん償却後の営業利益で若干の増益要因となった。エディトは金融分野に特化した出版・制作事業を展開しており、機関投資家向け金融専門誌「J-MONEY」など金融機関向けの定期購読誌を発行している。同社はエディトの子会社化により、既存の金融メディアと連携することによる事業拡大やエディトのデジタル事業拡大などのシナジー創出を見込んでいる。さらに、2026年2月に連結子会社化したwebCGは、自動車専門サイト「webCG」の運営会社で、業界ニュースだけでなく、技術解説や試乗記など質の高いコンテンツを提供している。業績への影響は軽微だが、同社グループが有する自動車領域における会員基盤や広告営業力、AI展開とwebCGが持つ編集力・ブランド力を融合することで、自動車メディア事業をさらに拡大していくことを目的に子会社化した。
(1) CP事業
CP事業の売上高は前期比1.4%減の5,491百万円、営業利益は同37.3%減の275百万円となった。売上高の内訳を見ると、ネット広告収入は同10.5%増の1,676百万円となった。高利益率の広告商材の売上が大きく減少した一方で、タイアップ広告が下期に入って回復したほか、新規連結したエディトやwebCGの売上が上乗せ要因となった。アドネットワーク広告の単価については、2025年夏頃を底に回復したが、回復幅については限定的であった。AI技術の進化でゼロクリックサーチが浸透し、運営メディアのPV数が減少傾向となったことも影響したものと見られる。
データ・コンテンツ提供売上は同0.2%増の2,506百万円となった。EC物販は伸び悩んだものの、「Response.」や情報セキュリティ専門サイト「ScanNetSecurity」など法人向け有料会員サービスのサブスク収入が増加したほか、子会社のエンファクトリーによる越境型研修サービス※、FITPによる車両衝突実験関連サービスなどが堅調に推移した。一方、メディア・システム売上は同4.1%減の1,081百万円と2期連続で減収となった。オウンドメディアの運営受託サービスが低調だったほか、複数ECサイト一元管理システムを提供するSAVAWAYの売上が伸び悩んだことによる。また、出版ビジネスについては前期末にパズル雑誌から撤退した影響で同44.1%減の255百万円となったが、アニメ雑誌等の売上は堅調に推移した。
※ 越境型研修サービスのうち、「越境サーキット」が大手企業のキャリア支援施策として導入が進んでいる。「越境サーキット」とは、他社のメンバーとチームアップし、ベンチャー企業のリアルな課題に対して、ヒアリング・仮説・提案の3ヶ月間を1タームにして行う越境・対話型オンライン研修を指す。
利益面では、収益性の高いネット広告商材の落ち込みが減益要因となり、営業利益率も前期の7.9%から5.0%に低下した。ただ、データ・コンテンツ提供が着実に成長しており、これまでのネット広告依存型のビジネスモデルから「360度ビジネス」へのシフトが徐々に進んでいるものと評価される。
(2) CS事業
CS事業の売上高は前期比10.5%減の461百万円と4期連続の減収となり、営業損失49百万円(前期は20百万円の利益)を計上した。売上高の内訳は、リサーチソリューションが同12.4%減の297百万円、ECソリューションが同6.8%減の164百万円といずれも減少した。リサーチソリューションについては主要顧客となる自動車業界向けが市況の影響を受け低調に推移したこと、ECソリューションについてはEC市場全体の伸びが鈍化してきたことが影響したものと見られる。
自己資本比率は70%台、潤沢な手元キャッシュでM&Aを推進
2. 財務状況
2026年6月期末の資産合計は前期末比104百万円増加の6,356百万円となった。流動資産では受取手形、売掛金及び契約資産が53百万円増加した一方で、M&A等の投資増に伴い現金及び預金が497百万円減少した。固定資産ではエディト及びwebCGの子会社化によりのれんが155百万円増加したほか、投資有価証券が188百万円、繰延税金資産が109百万円それぞれ増加した。
負債合計は前期末比269百万円減少の1,344百万円となった。主に有利子負債が156百万円、電子記録債務が55百万円、未払法人税等が37百万円それぞれ減少した。純資産合計は同373百万円増加の5,012百万円となった。利益剰余金が204百万円増加したほか、その他有価証券評価差額金が112百万円増加し、自己株式が34百万円減少(増加要因)した。
経営の安全性を示す自己資本比率は前期末の72.9%から77.4%に上昇し、D/Eレシオは0.11倍から0.07倍に低下した。有利子負債の削減を進めたことや自己資本の増加が要因だ。ネットキャッシュ(現金及び預金−有利子負債)は2,769百万円と前期末から341百万円減少したものの高水準を維持している。同社は潤沢な手元資金を活用して今後もM&Aを積極的に進める意向で、案件の規模次第では有利子負債を活用することも視野に入れている。目安としてはD/Eレシオで0.5倍程度を上限に考えている。
また、エンファクトリーの株式譲渡は、短期的には減収減益要因となるものの、保有資産を固定化せず、事業価値を顕在化したうえで回収資金を次の成長投資や株主還元へ再配分する取り組みと捉えられる。今後、こうした資本効率を意識したポートフォリオ経営が企業価値向上につながるか注目される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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