■事業概要
3. 経営戦略の評価
(1) BPaaSを活用し、コストリーダーシップと差別化を両立
同社グループの強みは、本来トレードオフの関係になりやすいコストリーダーシップと差別化を、BPaaSの事業構造を活用することで両立させている点にある。すなわち、「低コストか高付加価値か」というトレードオフ思考ではなく、標準化・クラウド化できる領域では徹底した効率化を進める一方、顧客固有の課題に対応する領域では専門人材や運用支援によって付加価値を高めるという、パラドックス思考に基づく事業モデルと捉えることができる。メンタルヘルステクノロジーズ<9218>は、メンタルヘルスソリューション事業について、「コストリーダーシップと差別化を融合したトータルソリューション戦略」を掲げている。
メンタルヘルスソリューション事業では、産業医業務を専門性が必要な業務とそれ以外に切り分けるとともに、「ELPISシリーズ」を活用して一部業務をクラウド化している。これにより業務効率化やコスト削減を図る一方、産業医の品質を担保する仕組み、産業医や保健師・看護師等の専門人材、多様なクラウドサービスを組み合わせることで、単純な産業医紹介やSaaSとは異なる課題解決力を提供している。
メディカルワークシフト事業でも同様に、タスクフォースが看護補助者等の人材を提供するだけでなく、総合職スタッフが医療現場に入り、教育やシフト管理、オペレーション調整までを一体的に担っている。今後はAI・デジタルによる業務効率化や省人化を組み合わせ、BPOからBPaaS、さらに経営支援へと提供価値を高める方向である。
(2) サービスの厚みを増し、競争優位を強化
もう1つの特徴は、M&Aやアライアンスを活用してサービスを積み上げ、それを顧客との関係深化につなげている点である。メンタルヘルスソリューション事業では、「産業医クラウド」を基盤に産業保健からメンタルクリニック運営支援・リワークへと領域を拡大してきた。インクルードのグループ入りによって、従来は分断されていた産業保健・医療・リワークをつなぎ、産業保健から職場復帰までを一気通貫で支援する体制も構築している。
こうしたサービスの拡充は、差別化だけでなくクロスセル・アップセルによる顧客単価の上昇にもつながる。特に大企業では、一部サービス・事業所への導入を起点として、「ELPISシリーズ」の追加や他事業所、グループ会社へと取引を広げる余地がある。同社資料でも、導入初期から拡大・安定運用期へ進むにつれて提供サービスと契約単価が拡大するモデルを示している。
通常はサービスの厚みが増すほど顧客の業務プロセスへの組み込みが深まり、スイッチングコストも高まると見るが、同社のメンタルヘルスソリューション事業におけるENTの月次平均の解約率は0.1%程度と極めて低い。「サービス拡充→クロスセル・アップセル→顧客との関係深化→スイッチングコスト上昇」という循環を形成することで、価格競争に陥りにくい独自の競争ポジションを構築している点も、同社グループの強みと言えよう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 中西 哲)
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