過去最安値圏に落ち込んだベトナム通貨ドンに、一段安を回避する材料が浮上。直近の経済成長率がコロナ禍後で最高の伸びを示すなか、株式市場の再編がドン相場を下支えするカギとして注目されます。国内経済の過熱やインフレへの懸念を和らげることができるでしょうか。
ドン相場は昨年、1ドル=2万6400ドン台と史上最安値を付け、今年に入っても安値圏での推移が続いています。春から夏にかけては一時2万6300ドン台まで下落。その後はやや持ち直したものの、戻りは限定的で足元も2万6000ドン付近と低迷しており、ドン安圧力は依然として根強い状況です。
米国の高金利を受けたドル高が背景にあります。加えて、エネルギー価格の上昇などでベトナムの輸入代金が膨らみ、企業によるドル需要が強まったことも一因です。輸入企業は海外への支払いのためドンを売ってドルを調達するため、貿易赤字の拡大もドン安圧力につながっているのです。
ただ、足元では高い経済成長に加え、外国企業による直接投資(FDI)が堅調に流入し、こうした海外マネーがドンを下支えしているもよう。そのため、夏場に付けた最安値圏からはやや値を戻しています。
新たな支援材料として期待されるのが、株式市場の再編。今年12月28日からハノイ証券取引所(HNX)の上場株式をホーチミン証券取引所(HoSE)へ移し、上場株の取引を事実上一本化します。市場の仕組みを分かりやすくし、取引の効率性を高めることで、海外投資家を呼び込みやすくする狙いがあります。
海外から株式市場への資金流入が増えれば、為替への波及も見込まれます。市場再編だけでドン相場が反転するわけではありませんが、外国人の買いが本格化すれば、ドン安圧力を和らげる一助となるでしょう。
これは急拡大しているベトナムの景気の観点からも重要です。先日発表された7-9月期国内総生産(GDP)は前年同期比9.95%増と高い伸びを記録する一方、物価上昇への警戒も強まっています。輸出企業には一定のドン安が追い風となる半面、過度な下落は輸入物価を押し上げ、インフレを加速させかねません。
ベトナム当局としては、行き過ぎたドン安を抑えながら通貨を安定させることを期待しているようです。今後は株式市場の一本化をきっかけに海外資金がどこまで流入するかが焦点になります。貿易赤字によるドン売り圧力を外国人投資家のドン買いで相殺できるかが、相場の行方を左右しそうです。
(吉池 威)
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。
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