平和の破壊。「暴政」北朝鮮をどうやって追い詰めればいいのか?

 

北朝鮮制裁は中国がカギ

Q:経済制裁の効果をどう考えますか?

小川:「経済制裁の効果が実際にどのくらいあるかは、議論が分かれるところです。尻抜けというかザルというか、形だけの経済制裁も珍しくありません。アメリカやEUはクリミアを併合したロシアに対して経済制裁をおこないました。政府高官の渡航禁止、在欧資産凍結、特定企業との取引禁止などです。ところが、アメリカはプーチン大統領と取引関係のある銀行を制裁対象とする一方で、それを含めると自国が困るロシア企業は制裁対象リストから抜いてあります。ロシアもアメリカに対抗して経済制裁を発動しましたが、やっぱり自国が困る企業を抜いてあります」

「今回の対北朝鮮制裁は、北朝鮮の最大の貿易相手国である中国がカギとなります。2月9日には米国のクラッパー国家情報長官が上院軍事委員会の公聴会で、北朝鮮の貿易の対中国シェアは約90%と証言しました。北朝鮮最大の輸出品は石炭で、北朝鮮の年間受け取り額は12億ドル約1,400億円)というのです。もともと北朝鮮とほとんど貿易をしていない国がいくら経済制裁を強めても効果はほとんどありません。贅沢品が入ってこないというような制裁は、国として耐えられないものではないからです」

「そもそも北朝鮮は、2006年に実施した最初の核実験に対する国連安保理決議1,718の時点から経済制裁を受けています。決議の主な内容は、次のとおりでした。北朝鮮の核実験やミサイル発射が国連安保理決議違反とされるのは、この決議1,718に反するからです」

●「北朝鮮核実験実施に対する国連制裁決議」の主な内容(2006年10月14日)

  • 北朝鮮が2006年10月9日に行った核実験を非難
  • 北朝鮮に対し、これ以上の核実験と弾道ミサイルの開発・発射の中止を要求
  • 北朝鮮に対し、核拡散防止条約と国際原子力機関(IAEA)への復帰を要求
  • 北朝鮮が、既存のあらゆる核計画と大量破壊兵器を、完全な、検証可能な、不可逆的な方法で放棄することを決定し、核不拡散防止条約とIAEAが定める条件に厳格に従って行動することを決定
  • 国連憲章第7章第41条に基づく経済制裁を実施することを決定(臨検の実施、奢侈品の禁輸、戦闘機・軍艦・ミサイルなどの特定の兵器の禁輸とそれらに関連する物資や技術やサービスの移転や調達の禁止等を決定)
  • 北朝鮮に対し、直ちに無条件で六者会合に復帰することを要請

小川:「国連安保理が北朝鮮に対して国連憲章第41条に基づく経済制裁を実施すると決めてから、今年で10年め。その間に北朝鮮は09年、13年、16年と3回も核実験を、09年、12年4月、12年12月と人工衛星打ち上げを名目とする大陸間弾道ミサイル開発実験を、それぞれ強行したわけですから、この意味では経済制裁の効果は薄かったといわざるをえませんね」

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