英バーバリーに逃げられた「三陽商会」が赤字に転落した本当のワケ

 

英バーバリー社のブランド戦略との相違

バーバリーのライセンスを三陽商会に提供していたのは英国のバーバリー・グループです。ライセンス契約が切れた影響で三陽商会の業績は悪化しました。しかし、それまでは日本でのバーバリーの業績は好調で、その恩恵をバーバリー・グループも受けていたはずです。それではなぜ、バーバリー・グループは三陽商会へのライセンス契約を打ち切ったのでしょうか。

バーバリー・グループと三陽商会との間に、ブランド戦略に対する相違があったことが大きな理由であると私は考えています。三陽商会が販売していた「バーバリー・ブラックレーベル」と「バーバリー・ブルーレーベル」は日本独自のブランドです。値段は英国本家の「バーバリー」ブランドと比べてもかなり低く設定されていました。ブランドイメージという観点では、別物と見てもいいほどの違いがあったのです。

バーバリー・グループは「バーバリーブランドの強化を世界的に進めていこうとしているようです。そのことは同社の『Burberry Strategic Report 2015-16』から読み取ることができます。同レポートの「会長の手紙」に「The Burberry brand has never been stronger.(バーバリー・ブランドは強くありませんでした)」(訳は筆者による)と記されていて、これまでのブランド力の弱さに対する危機感が示されています。

同レポートの「CEOの手紙」では「Brand first」が掲げられ、その一つとして「大きなブランドの一貫性の追求におけるもう一つの重要なマイルストーンは、35年間のライセンスの終了と過去10年間でグローバルな事業の構造的統合の最後の大きな一歩を記念して、日本のグローバルコレクションの完全な立ち上げを行いました」(本文は英語表記、日本語訳は筆者による)と記述されています。

以上から、バーバリー・グループが三陽商会へのライセンス契約を打ち切ったのは、バーバリーのブランド力を強化するための戦略の一環であることがわかります。バーバリー・グループは、三陽商会にライセンスを提供して短期的な収益を確保していくのではなく、ライセンスの提供を打ち切って独自でバーバリーのブランド力を強化していく戦略へ舵を切ったのです。

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