眼前に迫る中国の脅威。日本はアメリカに見捨てられたら終わるのか?

 

内的バランシングと外的バランシング

バランシング(直接均衡)は、「内的」と「外的」にわけられます。「内的バランシング」とは、脅威に対抗するために、「自国を強くすること」。簡単にいえば「軍備を増強すること」です。

外的バランシング」とは、脅威に対抗するために「同盟関係を増強していくこと」です。たとえば、日本は中国に対抗するために、

「日米関係を強化する」
「日印関係を強化する」
「日豪関係を強化する」
「日本と東南アジア諸国との関係を強化する」

などなど。

「内的バランシング」「外的バランシング」、どちらも重要。しかし、「どちらがより重要か?」と聞かれれば、(同盟関係を増強する)「外的バランシングの方がより重要」といえる。実例をあげましょう。

勝った日ロ戦争、負けた日中戦争

日本は、当時世界最強の陸軍国だったロシアに勝ちました。もちろん、私たちのご先祖様が、死力を尽くして戦ったからです。そして、日本が当時、覇権国家だったイギリスと同盟関係にあったことも大きかった。世界一の戦略家ルトワックさんはいいます。

当時、ロシアの艦隊は、日本のそれよりもはるかに大規模だった。つまり「シーパワー」では、ロシアが上回っていた。その意味では「大国VS小国」という構図だ。

 

ところが、ロシアの「シーパワー」は、日本の同盟国であるイギリスの「海洋パワー」によってほぼ無効化されていたのである。
『中国4.0~暴発する中華帝国』p161~162

イギリスは、日本のために何をしてくれたのか? ロシアのバルチック艦隊は、直接極東まで来ることができません。途中で、燃料、食糧、水を補給しなければならない。イギリスは、自国が支配している港にロシア艦隊がくることも、補給することも許しませんでした。それで、バルチック艦隊は、アフリカ大陸を大回りし、日本海に来るまでに相当疲弊していたというのです。

さらに、日本は、アメリカから相当の資金援助を受けていました。実際日ロ戦争は、イギリスとアメリカの支援があって勝利することができた。このように日本は当時、「同盟関係」(外的バランシング)をうまくやっていました。

しかし…。日清、日ロ、第1次大戦に勝利し「世界5大国」の一角を占めるようになった日本。十分に強い陸軍、海軍を持つようになり、「外的バランシングを軽視するようになっていきます。結果、満州利権をめぐって、アメリカと対立。第1次大戦時イギリスの「陸軍派兵要求」を断りつづけ、「日英同盟」を破棄される。「満州国建国」にこだわり、「国際連盟」を脱退してしまう。強い軍隊を持つ日本は、中国との戦闘で、連戦連勝でした。

いっぽう、弱い中国国民党軍は、「外的バランシングに力を注ぎ、1937年に日中戦争がはじまったとき、アメリカ、イギリス、ソ連からの支援を受けるまでになります。皆さんご存知のように、勝ったのは、「弱い軍隊でも外的バランシング」(=同盟関係増強)を最重視した中国でした。

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