ギリギリで生きている日本経済に突きつけられた金融緩和のジレンマ

 

中曽副総裁の講演会

このような状況で、8日に中曽宏副総裁が講演した。黒田総裁は、いつも強気であり、講演会での内容と反対の事をすることが有り、信用できないが、それに比べれば、中曽宏副総裁の講演は信用できる。

中曽副総裁は、今年1月に導入を決めたマイナス金利付きQQEの効果と影響について「イールドカーブ全体に低下圧力を加えるという意味で、マイナス金利と長期国債の買い入れとの組み合わせは、きわめて強力だ」とし、「金融政策ツールとしての有効性が確認できた」とした。

しかし、「マイナス金利導入の時から、金融機関の収益に過度の悪影響を及ぼし、金融仲介機能が悪化することになってはいけないということが最も重要な論点だった」と述べて、マイナス金利を深掘りするが、金融機関の収益をカバーすると述べている。

地銀やゆうちょ銀行、GPIF、企業年金資金など金融機関は、大量の長期国債を持っていて、この国債の金利が下がると収益が大幅に減る。国債の金利の維持が重要な課題になっているのである。ゆうちょ銀行が送金手数料を取ることにしたのも、国債の金利低下が大きいために利益が出ずに仕方なく行ったのである。

中曽副総裁も「長期金利や超長期金利の大幅な低下が、保険や年金の運用利回り低下や貯蓄性商品の販売停止につながっている」とし、この金利を維持する方向のようである。

銀行や年金資金が持つ長期国債の金利を上げて、短期国債の金利を深掘りすることになると見る。日銀は長期国債を買わずに価格を上げて金利を維持して、短期国債を買って価格を上げて、金利を下げるようである。10年国債以下ではマイナス金利が深掘りされるが、それ以上の国債では、金利を維持することになる。

これにより、長期金利は上がり1%程度になり不動産投資などの長期固定金利が上がる事になる。短期金利より長期金利が安いというようなことはなくなる。住宅ローンで20年固定金利の方が1年変動金利より安いということはなくなる。住宅ローンの借り換えは早く行うことをおすすめする。

金融機関の短期金利は、日銀のマイナス金利ではなく、銀行間の短期金利を参考に、その上に儲けを入れて決めている。このため、銀行では、日銀がマイナス金利を下げても、借出し金利は下げないが、預かる金利はマイナス金利にして、手数料を乗せる可能性である。このため、日銀が長期金利を上げると銀行経営的には楽になる

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