今さらだけど、なぜトランプが勝利したか、しっかり検証していく

 

▼とにかく現状不満層の情念が塊となって出てきた。それに尽きるのであって、今から考えれば不規則な発言も、お行儀の悪さも何もかもが「現状打破」ということで許容され、支持されてしまった。

▼有色人種、若者、女性の票も予想以上にトランプに流れた。その中にはサンダース支持票も相当ありそうだ。

▼排外は良くない、下品な言動も良くない、そんなことはわかっている、だが、そうしたネガティブなものを変革へのプラスのサインと受け止める「ほど」に、現状への不満があったということだ。

▼先進国型の社会、つまりITや金融・バイオといった高度知的産業にだけ富と尊敬が集中し、それ以外の人々の生存権は再分配で保証されるにしても、誇りや名誉は無視されるという社会モデル、仮にそれを21世紀型の先進国モデルと呼ぶのなら、ヒラリーは堂々と、そして余りにも無神経にそのモデルを肯定して、不信任を突きつけられた。

▼排外とか、非寛容というのは現象面であり、本筋はこの「先進国モデルへの不信任。そこで問われるのが、国や地域に根ざした労働、具体的には高度に知的ではない労働に対する評価と分配の仕組み。この問題に対する答えはまだない。だが、不信任を突きつけられたという事実は限りなく重い。

▼オハイオの知事で、大統領候補として善戦したジョン・ケーシックが言っていたのだが、トランプ支持者は決して貧しくはない」。つまり、本当に貧しかったら再分配を期待して民主党に行くというのだ。自分は仕事はある。だが、今度クビになったら「次はない」とか、自分の周囲に失業した人がいる、あるいは自分の属している産業が社会から尊敬されていないといった「今は困ってはいないが名誉や希望が失われている人」が核になっているという、その見立てはデータが証明した。

ヒラリーの選挙戦の失敗は、「チャレンジャーの輝きを失ったこと。「アメリカの現状・現体制の象徴」ということが「弱点」だということに、余りにも余りにも無自覚だった。

女性だということがマイナスに働いたということはあるかもしれない。特に「女性初の大統領」を狙うという運動が輝きと共に受け止められなかった悲運は大きい。

▼もしかしたら、もう少し一般的な問題があるのかもしれない。「男性と同様の理詰めのトーク」に加えて「母親的、あるいは女教師的な表情やジェスチャー」というものが、ある種どうしても人々の琴線に触れなかった、そんなコミュニケーションスタイルの問題があるかもしれない。

▼ちょっとだけ自分を卑下したり、自分の弱点も笑い飛ばしたりという、変化球的なコミュニケーションは苦手な人だった。そう考えると、実直な速球一本槍のスタイルの悲運とも言える。

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