「自動的に父の名字になるのは違法」イタリアで下された歴史的判決

2016.12.14
by gyouza(まぐまぐ編集部)
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日本では選択的夫婦別姓制度の導入について大きく賛否がわかれ、長らく議論が続いている。明治31年に施行された民法の夫婦同氏を定めた規定は、憲法24条のうたう「両性の平等」に反しているのではないかと主張する人が多い。一方、夫婦同姓が家族の一体感を生むという声も少なからずある。

日本でこの問題が議論されている間に、イタリアの裁判所が名字と男女平等に関わる歴史的な判決を下した。つまり、憲法裁判所が先月11月、結婚している男女の間に生まれた子どもに対し、必ず父親の名字が与えられる同国の規制は違法との判断を下した。イタリア議会もより平等な社会を作るべく、ついに法律を改正するのであろうか?

ローマ法が現在社会に適するのか?

イタリアでは2013年をもって選択的夫婦別姓制度が導入され、結婚あるいはシビル・パートナーシップで結ばれている伴侶が同姓か別姓かを自ら選ぶことができるようになった。しかし、特定の法律によって定められていないものの、ローマ法(古代ローマ時代に制定された法律)に制定された法律の影響により、結婚している男女の間に生まれた子どもに対し、親の意思を問わず父親の名字をつける慣習法が残っている。

長年の議論を経て、今年の11月に憲法裁判所はこの慣習法が不公平かつ非合法であると判決を下し、子どもに父親と母親、両方の名字をつける権利を尊重すべきだとした。この判決のおかげでブラジル人女性とイタリア人男性の間に生まれた子どもに、父親だけでなく母親の姓もつけることが認められた。この歴史的な判決をきっかけとして、イタリア議会も現代社会のニーズに応える新たな法律を制定することが期待されている。

40年前から続く議論

イタリアでは、子どもの名字に関する法律改正が必要であるとして議論が続いている。憲法裁判所が既に2006年に子どもに父親の姓だけをつける習慣法が憲法によって定められている男女平等の原理に反していると判決を下していた。また、2014年に欧州人権裁判所もイタリアの法律が女性差別を招くと判断し、法律改正の必要性を訴えていた。

実は、イタリア議会では40年前からこの議論が続いている。しかし、いまだに結論に至っていない。2014年に改めて法律の試案が提出され、子どもに母親の姓、父親の姓、それとも両方の姓、いずれかを選べる権利を保障する法案が審議された。両親がどちらの姓をつけるかについて同意しない場合はアルファベット順で両方の姓をつけることを定めるこの法案は代議院(下院)によって可決されたものの、審議が元老院(上院)に止まり、いまだに成立していない。

男女平等のさらなる実現に向けていくイタリア

「家父長制の遺物」であり、現代社会に適さないとされているこの慣習法がとうとうなくなるのであろうか? 今度は父親の名字に加えて母親の名字もつけるよう義務づけられるのであろうか? それも選択制度が導入されるのであろうか? その答えはまだ不透明だ。憲法裁判所は判決を下したものの、判決理由はまだ発表していない。

 今回の判決は国際結婚で生まれた子どもに関係したものだが、国籍を問わず両方の姓をつけたい親が増えつつある。スペインや南米では依然として父親と母親、両方の姓をつける習慣があり、昨今アメリカやヨーロッパでも同じ傾向が見られる。近い将来イタリア議会も国民の要求に応えて男女平等のさらなる実現に向けていくであろう。

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(グアリーニ・レティツィア)南イタリア出身で、2011年から日本に滞在。ナポリ東洋大学院で日本文化を勉強してから日本の大学院に入学。現在、博士後期課程で日本現代文学とジェンダーを研究しながら、Webライターとして海外旅行、異文化、難民などについて執筆。

 

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記事提供:ニュースフィア
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