集団的自衛権は日本の安全保障に必要なのか?

 

苦しい政府答弁

そのような状況が明らかであるにもかかわらず、政府は「集団的自衛権」がない限り日本の安全が確保できないというイメージ作りに懸命になっている。「日米同盟の強化によって国際的な責任を果たす」だとか、「国民の安全と平和を守るためには『集団的自衛権』は絶対に必要」などという、意味のはっきりしないイメージが先行した空虚な言葉が飛び交っている。

さらに「集団的自衛権」を支持する人々からは、「尖閣諸島で米軍が中国に攻撃された場合、『集団的自衛権』がなければ自衛隊はこれに反撃できない」とか、「日本の周辺で米軍が北朝鮮に攻撃されているのに、『集団的自衛権』がなければ日本はなにもできない」というようなことがまことしやかに言われている。

「集団的自衛権」は本当に必要なのか?

いま主要メディアでは、こうした議論が散々流されている。「集団的自衛権」がないと、日本の周辺で米軍が攻撃されても日本は反撃できないといったような印象を持ってしまう。テレビをつけっ放しにしていると、イメージ操作に流されてしまいかねない。

でも、本当にそうなのだろうか? やはり自民党とマスメディアの操作に騙されないためにも、一度きちんと確認しておいたほうがよいだろう。

日本の安全保障は「個別的自衛権」で十分

結論から先に言うなら、日本の安全保障は「個別的自衛権」だけで十分に対処可能であり、「集団的自衛権」はまったく必要はない

まず、日本の安全保障の基本になっている1960年の「日米安全保障条約」だが、その第5条には次のようにある。

「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する」

ちょっと分かりにくいかもしれないが、これは、「日本国の施政の下にある領域」で日本が攻撃された場合、日本とアメリカは共同してこれを撃退するということである。

攻撃されなくても対処が可能

しかしこれだと、日本は攻撃されてはじめて日米は共同でこれを撃退することができる。アメリカだけが攻撃された場合や、いまは攻撃されていないが、将来攻撃が予想される不穏な事態には対処することができないのではないかと不安になる。たしかに、「日米安全保障条約」の段階ではこのような事態には十分に対処できなかったことは事実である。

そのため、1993年前後から、自衛隊の負担増を求めるアメリカの要求に押されるかたちで、日本の周辺領域における日米の役割と行動を細かく規定するガイドラインの設定が何度か行われてきた。

まず、1997年の「日米防衛協力のための指針」では、朝鮮半島での戦争を想定し、日本が直接攻撃されていなくても、自衛隊が米軍の活動を後方で支援する内容が盛り込まれた。

そして2001年に制定された「周辺事態法」では、さらに米軍の「後方支援」から一歩進んで、日本が直接攻撃されていなくても、そのまま放置すれば日本に脅威をもたらす事態には、自衛隊は軍事行動をとることが可能となった。日本の周辺領域で米軍が攻撃された場合はこれに該当する。

また、2005年の「日米同盟:未来のための再編」では、周辺領域の情勢が緊張し、日本に対する武力攻撃に波及する可能性のある場合を想定し、日米の役割と任務を細かく規定している。

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