なぜジョブズやソニー創業者は、優秀な経営者と言われ続けるのか

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起業して何年経っても、経営者の悩みは尽きないもの。今回の無料メルマガ『戦略経営の「よもやま話」』では、著者でビジネス全般に精通する浅井良一さんが、「顧客が求める最高のものを創り上げて提供するのが企業の仕事」とした上で、その「最高のもの」をとことん追求し、それを創り上げられる人間を探し出し、社員を厳しく指導しながらもやる気を奪わない「優秀なリーダー」であるために必要な要素について考察しています。

人こそ最高の資源

経営で最も肝要で重要なのは人です」と言い切れます。お金も確かに大事ですが、有望な事業であることを証明できればタイム・ラグはあるでしょうが、社会は見捨てることなく工夫と努力があれば集まります。「最高のもの」は何かは「人でなくては」見つけ出せず「最高のもの」を創り上げるのも「人の熱意と知恵と知識」なくしては成し得ません。

少し本題とそれるかも知れませんが「企業規模」について考えてみます。私の行きつけのフレンチのレストランがありました。決して高級で最高の料理を提供してくれる訳ではなかったのですが、料金がリーズナブルで味も手抜きがなくシェフもフレンドリーで12の椅子席はいつ行っても満員でした。

ところで、このシェフには「本格派レストラン」という長年の夢がありました。そこで、30席のグレードアップした店に衣替えを行いました。そうしたら、途端に贔屓であった顧客が少しずつ来なくなったのです。それは顧客が求ていた「最高のもの」というのが、グレードの高さではなくリーズナブルで手抜きのない料理とシェフの人柄に触れることだったからです。

顧客が求める最高のものを創り上げて提供するのが企業の仕事」です。「最高のもの」を創り上げるためには、どうしたらよいか。そのために経営者がしなければならないことは、本質的に3つの事柄です。1つは、自身が最も強みを発揮できる市場を定めて、顧客の「最高に求めているもの」を見極め、それがつくれる「最高の人材を見つけることです。

戦後、急成長した多くの中堅・大手企業はこのことを実行し成功した企業で、代表的な企業が、ソニーであり、ホンダであり、シャープであり、京セラであり数をあげれば限がありません。というより、よりよく成長するための基本原則と言えるもので、この原則から逸脱してしまうと「最高のもの」はつくれなくなってしまいます。

ソニーの設立時の趣意書に要約ですがこんなことが書かれていました。

一、不当なる儲け主義を排す。
一、経営規模はむしろ小なるを望み。
一、極力製品の選択に努め技術上の困難はむしろこれを歓迎。社会的に利用度の高い高級技術製品を対象とする。
一、従業員は厳選されたる小員数をもって構成し、個人の技能を最大限に発揮しすむ。

…基本原則そのものです。

「スマートフォンは、誰がつくったのでしょうか」と問われれば「スティーブ・ジョブズ」と答えられますが、厳密に言うと正解ではありません。「大阪城をつくったのは、大工さんです」と同じ類の問答です。しかし、スティーブ・ジョブズなくしては、また優秀な技術スタッフなくしてはスマートフォンはこの世に存在しなかったと断言できます。

同じように「ソニー」においてもテープレコーダー、トランジスタラジオ、ウォークマンは井深さんや盛田さんの存在なくして世にありません。井深大さんや盛田昭夫さんはそれぞれ優秀な技術者でもあったのですが、スティーブ・ジョブズは優秀な技術者ではまったくありません。トップの役割は、クリエイトして無理・難題を押し付け通すことです。

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