中国主導のAIIB、参加国が70か国に激増。日米さらに孤立

 

米中覇権争奪戦 ~2016年まで

ここで、AIIBにまつわる流れを復習しておきましょう。

習近平は2013年10月、APEC首脳会議で、「AIIB設立」を提唱しました。2014年10月、設立の覚書に調印。この当時、参加国は21か国でした。

2015年3月、私がいつも「AIIB事件」と呼ぶ出来事が起こります。そう、イギリスがアメリカの制止を完全無視して、「AIIB参加」を決めた。これで「雪崩現象」が起こります。「アメリカと『特別な関係』にあるイギリスが入るのなら、俺が入っても大丈夫だろう!」。そう考えたドイツ、フランス、イタリア、イスラエル、オーストラリア、韓国等、つまり、アメリカの同盟国親米国が続々とAIIBへの参加を決めた

これは、アメリカ・オバマ政権に大きな衝撃を与えました。なぜか? 「親米国が、アメリカではなく、中国の言うことを聞いたから」です。国際社会は、「アメリカの覇権は終わった。中国の時代が来たのだ…」と認識しました。これで、「ぼんやり」「親中のオバマも目覚めます

それまで、オバマ外交はメチャクチャでした。2013年8月、アサド軍が化学兵器を使ったことを理由に、「シリアを攻撃する!」と宣言した。2013年9月、「やっぱりやめた!」と戦争をドタキャンして、世界を仰天させた。

2014年2月、ウクライナの革命を支援し、親ロシア・ヤヌコビッチ政権を打倒した。2014年3月、ロシア、クリミアを併合。2014年4月、ウクライナ内戦ぼっ発。これは、ウクライナ新政権を支援するアメリカと、ウクライナ東部「親ロシア派」を支援するロシアの、「代理戦争」。

2014年8月、今度はシリア「IS空爆」を開始。このように、大戦略的には、「まったく意味のないことをしてアメリカの国力をいたずらに消耗させていた。

ところが2015年3月、「AIIB事件でオバマは生まれ変わりました。2015年4月、訪米した安倍総理を大歓迎した。2015年5月、オバマは、突如中国の「南シナ海埋め立て」を大声で非難するようになった。日本でも「米中軍事衝突の危機!」などと報じられました。

同5月、ケリー国務長官(当時)は、クリミア併合後初めて訪ロ。米ロは和解に向かい始めます。これで、ウクライナ情勢は、安定しました。2015年7月、米ロの協力により、「イラン核合意」がなされ、イラン問題は解決(トランプは、蒸し返すつもりですが…)。2016年2月、米ロの協力により、「シリア内戦停戦合意」がなされた(後に崩壊。しかし、ロシア、イラン、トルコによって、和平協議が続いている)。

このようにオバマは、「AIIB事件」後、ウクライナ、イラン、シリア問題を速攻で解決することに成功した(完全な解決、成功とは言えないまでも)。そして、中国との対決にアメリカの国力を向けることにしたのです。

国際金融資本もオバマの味方。例えば、ジョージ・ソロスは2016年1月、「ハードランディングは不可避!」と宣言し、中国を見捨てました。国際金融資本に見放された結果中国経済はボロボロになりました。中国のGDP成長率は2016年、6.7%とされています。しかし、実態はもっと悪く、高橋洋一先生は、「マイナス3%ぐらいだろう」とおっしゃっています。

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