金正恩ニヤリ。北朝鮮が経済制裁を受けても揺るがない3つの理由

 

軍事圧力と経済制裁にも限界

最初は威勢のよかったトランプも、軍事作戦の発動による犠牲の大きさを知って、4月以降は、軍事面では空母機動艦隊2個の日本海派遣、B1核搭載爆撃機の韓国進駐、原子力潜水艦の釜山寄港、間もなく行われるかもしれない韓国配備のTHAADによる迎撃実験──などによる威嚇的なデモンストレーション(のみならずそれに対する北のスクランブルや潜水艦隊の動きなどのエリント=電子情報収集活動)に留めている。これが本格的な戦闘準備ではないことは自明なので北も自制的な対応をしているが(但しサイバー攻撃計画の立案にはそのデータが使われるのかもしれない!)、これもちょっとした手違いや勘違いから偶発戦闘が勃発する危険を孕んでいるので、ほどほどにしないといけない。

この軍事圧力と並行して、中国に主に責任を負わせて経済制裁を一段と強化して北を屈服させようというのがトランプ政権の「平和的圧力作戦」(ティラーソン長官)という考えだが、これはなかなか難しい

第1に、一般論として、「経済制裁」という手段そのものが、1806年のナポレオンによる対英国「大陸封鎖令」以来、最近のクリミア問題をきっかけとした対ロシア制裁に至るまで、大きな成果をあげた例はほとんどない。どんな国境にも抜け穴はある。

第2に、特に北は制裁に強い。上掲のカン教授は「制裁と脅しは過去においても役に立たなかったし、将来においても同じだろう。祖父や父と同じように、彼は圧力に次ぐ圧力に常に直面してきた。今回のミサイル発射が、トランプ政権が複数の空母を派遣し、先制攻撃に出る危険が高まる中で行われたのは、驚きではない。北は予測不能な国ではなく、むしろ世界で一番予測しやすい国なのだ」と述べている。

第3に、中国も(ロシアも韓国も)北を徹底的に締め上げて国家崩壊に陥るようなことは絶対に避けたいので、「経済制裁を強化する」と言っても何をどこまで制約すべきなのかの判断は極めて難しい。ガサツなトランプは「なぜ中国はもっとやらないんだ」と不満を口にするが、そんな単純ことではない。

なお中国にはもう1つの準軍事的(パラミリタリー)な裏シナリオがあると言われていて、それは中国が裏で糸を引いて平壌中枢で「宮廷クーデター」を仕組むことである。しかし金正恩は、父親と同様、それについは警戒を怠らず、叔父の張成沢とそれに繋がる金正男をすでに殺害して芽を摘んでいる。しかし中国はまだ諦めてはおらず、最終的にはこれを脅しの道具に使うのかもしれない。これが米軍特殊部隊による突入作戦と違うのは、外国の侵略による暗殺ではないので戦争になりにくいという点にある。

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