複数の年金を貰える権利があっても一つの年金しか受給できない?

 

問題は65歳から。そういやこの妻は結局寡婦年金を貰う事はできませんでしたね…^^;。65歳になると遺族厚生年金と自分の老齢の年金が貰えるようになる。しかしまず、中高齢寡婦加算584,500円が妻の65歳到達を機に消滅し、遺族厚生年金641,250円のみとなる。また、妻自身の老齢厚生年金268,021円も貰えるが、その金額分が遺族厚生年金から引かれる。だから、遺族厚生年金額は641,250円-268,021円=373,229円として支給。

最後に計算するのは妻自身の老齢基礎年金額。

  • 妻の老齢基礎年金→779,300円÷480ヶ月×(163ヶ月+163ヶ月)=529,274円

つまり、65歳からの妻の年金総額は遺族厚生年金373,229円+老齢厚生年金268,021円+老齢基礎年金529,274円=1,170,524円(月額97,543円)。

65歳前より年金総額が低くなってしまいましたね…。人によってはこのように65歳以降は年金総額が減ってしまう場合があります。

※追記

この妻は65歳以降の年金総額が減らないようにすることはできないのか?

今の老齢基礎年金は326ヶ月で計算されてますよね。中高齢寡婦加算の額は584,500円でしたが、これは老齢基礎年金の4分の3の額を表します。つまり国民年金保険料納付済期間が360ヶ月以上になればいい。

だから、360ヶ月までには34ヶ月足りない。

まず平成30年5月時点で、国民年金保険料の時効になる過去2年1ヶ月以内(この妻なら平成28年11月から平成30年3月までの17ヶ月の滞納期間)を納める。そして、60歳に到達する月分から65歳到達月の前月の60ヶ月分は最高で国民年金保険料が任意で納められるから、市役所や年金事務所で任意加入を申し込む(この任意加入時に合わせて月額付加保険料400円を払う事で付加年金も市役所で申し込める)。

付加年金(日本年金機構)

過去の直近の未納分17ヶ月と最高60ヶ月任意加入で納めれば77ヶ月分の老齢基礎年金が増えるから、まあそうなれば326ヶ月+77ヶ月=403ヶ月の期間となる。

最大403ヶ月という事になれば、老齢基礎年金は779,300円÷480ヶ月×403ヶ月=654,287円となり65歳前の年金額をかなり超える。

image by: Shutterstock.com

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佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
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【著者】 年金アドバイザーhiroki 【発行周期】 不定期配信

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