世界に遅れをとった日本が、偏見を捨て「eスポーツ」大国となる日

 

ゲームへの「偏見」払拭のため、ゲーマー社員を雇用した企業

停滞する日本のeスポーツ業界を打開しようと、会社を挙げて取り組む動きも出てきた。ゲームソフト企画・開発のポノス(本社・京都市下京区、辻子依旦社長)では、野球などのスポーツの実業団を参考に、プロゲーマーを社員として雇用する、ゲーマー社員制度を発足させた。

実際に社員を募集し、2017年6月より、既に8名のプロゲーマーを採用している。

ゲーマー社員を統括する、ポノスの板垣護いろはスタジオ・スタジオ長は、この制度を始めた理由を次のように語る。

「ゲームには未だに世間に渦巻く偏見のようなものがあって、『いい歳をしていつまでゲームをやっているの』みたいな見方を無くしていきたいと思ったのです。eスポーツ業界にもアングラなイメージが付いていましたから、業界に関与して底上げをしていかないといけないのではないかと考えて、ゲーマー社員の募集に至ったわけです」。

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ポノスの板垣護いろはスタジオ・スタジオ長

ゲームがスマホでプレイできるようになった時代背景もある。eスポーツの普及にはプレイヤー数が多くなることが必要だが、従来はゲームを楽しみたい人がゲーム機とそれに対応するソフトを購入しなければ遊べなかった。

ところが、これだけスマホが一般化してくると、わざわざゲーム機を購入しなくても、誰もが電車やバスの中でゲームをダウンロードして遊べるようになった。ハードとソフトの面で、ゲームに対するハードルが低くなったのを、ポノスは「eスポーツが日本でもブレイクするチャンス」と見た。そこでゲーマー社員募集に踏み切ったのだ。

「ゲームをやっている人がすごいと思われるような世の中にしたい。また、そういうドラマが生まれるゲームを開発したい」と板垣氏は目を輝かせる。

ゲーマー社員たちは、広報部員としても働き、ゲームの宣伝をすることで、ポノスのみならず業界全体を底上げする任務を担っている。

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ゲーマー社員が獲得したメダルやトロフィーの数々

ポノスでは実際に、4月にスマホ向け1対1の対戦型アクションゲームアプリ『ファイトクラブ』をリリース。最高賞金5万円のデイリー大会などの賞金を出すサービスを毎日実施している。残念ながらこの『ファイトクラブ』は11月30日14時を以て、わずか7ヶ月でサービスを終了することとなったが、eスポーツに一石を投じたと言えよう。

残念な結果となった要因として、格闘ゲームとしてはスピード感に欠ける面があったという意見も聞くが、毎日賞金を出すシステムに無理があったようだ。

また、賞金の出る大会では同じ能力のレンタル装備で遊ぶので、全プレイヤーが平等な条件で開催されることが浸透しなかったと、指摘するゲーマーもいる。

日本では課金ガチャによって、高額な課金で得たアイテムを装備しないと勝てないオンラインゲームが多い。グリー、モバゲーのようなソーシャルゲームは特にそうだ。そのイメージで大会が見られると、参入者が増えなくなってしまう。eスポーツの公平性を、いかに世間に周知させるのかが課題だろう。

ポノスでは、他にもリリースに向けて仕込んでいる幾つかのゲームがあるそうなので、改めて期待したい。

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