韓国を徴用工問題だけで見るな。日本が見えない「大きな物語」

 

米国の通商政策

通商交渉では、日本に対して、20%の自動車関税で脅して、農産物の自由化を勝ち取ることを優先している。米国の大豆農家、牧畜農家の支持を得ることを優先する。自動車については米国での生産をするように求めるか、米国産日本車の輸入を求めてくる。

中国の次は日本とドイツに狙いを定めている。その中心的なテーマが自動車の輸入関税で脅して、農産物輸出を有利にすることである。 中国は、自由貿易を推し進め、知財権保護や自由化、関税ゼロ化などを推進していくことで、米国の関税UPを止めようとするが、そのスピードが問題になる。中国国内企業の保護はできなくなるが、中国企業の実力は相当に上がってきているので、自由化しても、中国の経済力が減衰することはない

米国の要求を実行する方向で、中国の指導層も覚悟を決めていると思う。このため、11月29日にトランプ大統領と合意する可能性もあり、両国ともに相手に対して強硬と思っている世界の政治家を驚かせる可能性もゼロではない。少なくとも交渉開始を合意するはず。

トランプ大統領の関心は通商問題だけであり、安全保障問題には興味がない。米国にとって経済分野で得か損かしか考えない。政治思想などはないからである。

トランプ政権で安全保障を考えているのはクシュナー上級顧問やボルトン補佐官とマティス国防長官などであり、その対立が先鋭化しているように見える。マティス国防長官は対中国を重視し、クシュナー上級顧問とボルトン補佐官は中東を重要視している。

米中通商問題で合意すると、世界景気は再度上昇してくる。株価も上昇して、民主党に下院を握られて穏健化するとトランプ人気は確実になるかもしれない。中国市場も開放されて、日本やEUにとってもよいことになる。

そして、確実に米国の時代から中国の時代になる。将来の歴史家は米国の対中貿易戦争によって、中国を強くしたということになるかもしれない。

しかし、ナバロNTC委員長は「中国との通商交渉に口出すな」とウォール街に警告したように、このストーリーを先に出すと中国の譲歩が少なくなると見ているようである。

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