平成16年の年金改正の時にこの780,900円という本来の金額を基盤として、これからはちゃんと物価変動に合わせようねっていう事になった。でも、特別に1.7%引き下げなかった年金額をその後も支給しようってなった。これは「特例水準の年金」と呼ばれ、平成26年度まで支給され続けた。ただし、その後物価が上がっても年金額を上げずに相殺しながら本来あるべき年金額に近づけていくよ!っていう事になった。
しかし平成16年以降も物価はなかなか上がらず停滞し続けた。1.7%の過払いを解消しようにもなかなか相殺に繋がらない。その結果、平成24年度には年金の払い過ぎが1.7%から2.5%までに拡大していってしまった。平成23年度までに年金の過払いは累計約7兆円に達してしまい、その後は1兆円規模で年金の過払いが膨らんでいく事が見込まれた。このままだと財政的にも危険ですよね。
そこで、年金を平成25年10月に1%、平成26年4月に1%(物価が0.3%上がったから実際は0.7%下げ)、平成27年4月に0・5%下げて2.5%の過払いを解消した。年金額が目に見えて引き下がるから、この時高齢者の何かの代表の人達が国に抗議をしていたのがニュースを見ていて印象的でした。なぜかというと、「これからの若い人たちのためにも年金の引き下げは許さない!」というような事を言っていたから。
まあ、意味もなく引き下げるのはどうかと思いますが、今まで年金が過払いされ続けたので将来の年金財政を守るためにも年金額を本来の年金額に戻す事がとても重要な事だった。過払い分を引き下げなければ将来の人達の年金や負担がヤバくなるのに、若い人達のためにも引き下げるな!ってどういう事なんだろうと思った。あのまま過払いをし続けていたら、いつまでも余分な年金給付費が増え続けて若い人たちの今後の年金の確保にも悪影響を及ぼし、そして保険料負担や税金の負担の増大へと向かっていたでしょう。
とはいえ、本来年金を引き下げなければならなかった当時の政府が引き下げなかったのが一番いけなかったんですけどね^^;。いつまでも引き延ばしたせいで、平成16年改正の時に導入されたマクロ経済スライド(物価や賃金の伸びから平均寿命の延びや少子化による現役世代の減少という年金の負担増となる要因を数値化したものを引く)も平成27年に本来の年金額になるまで発動されなかった。
マクロ経済スライドは今後少子高齢化が加速する中でも、年金の負担増を抑えながら、保険料収入の中で年金額を確保するためにはとても重要な役割を持ちます。それが、昔の1.7%の過払いが解消するまでは発動できないという事になっていたから、平成16年から実に10年も棚上げされてきたわけですね。マクロ経済スライドに関しては過去に何度も話してきましたのでこの記事では省略します。
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