英国のシンクタンクが日本部新設を発表も、単純には喜べない理由

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英国の国際戦略研究所(IISS)が日本部を新設することを発表したと、読売新聞が報じました。英国を代表するシンクタンクを通じ日本の視点が世界に発信されることは意義があると評価しつつ、単純に喜べないと語るのは、メルマガ『NEWSを疑え!』の著者で軍事アナリストの小川和久さんです。小川さんは、かつて自著『頭脳なき国家の悲劇』で指摘した日本の研究機関の貧弱さは、発信力においていまだ変化がないと、今回の報せを単純に喜べない訳を明かします。

英国のシンクタンクが日本研究を始める

英国の政策シンクタンク国際戦略研究所(IISS)が2020年3月、日本部を発足させるそうです。

「英国の政策研究機関・国際戦略研究所(IISS)が、 日本の外交・安全保障政策を中心的に研究する『日本部(ジャパン・チェア)』を新設する。軍事、経済両面で大国となった中国の動向に世界の注目が集まるこの時代、海外の有力研究機関が今、日本専門の部署を設ける狙いは何なのか。(以下、省略)」(6月8日付読売新聞)

IISSは、世界各国・地域の軍事力を分析し、毎年発表する報告書『ミリタリー・バランス』で知られ、各国の国防相や軍事専門家が一堂に会し、アジア太平洋の地域情勢や防衛協力を議論する『アジア安全保障会議』(シャングリラ・ダイアローグ)を2002年から毎年シンガポールで主催しています。

ジョン・チップマン所長によれば、

「日本部は、ロンドンの研究所本部に置く。部長はフルタイムで日本の外交・安全保障政策を研究し、日本にかかわる課題について、英国、欧州、国際舞台で活発に発信する。インド太平洋や中東の地域課題などと合わせ、サイバーセキュリティーのような新たな分野でも、日本の視点を積極的に取り上げ、研究する拠点とする」(6月8日付読売新聞)

とのことです。

記事を書いた飯塚惠子記者は、5日夜、東京都内のホテルで開かれた日本部新設記念夕食会は、英政府の情報機関の一つ政府通信本部(GCHQ)の前長官ロバート・ハニガン氏が基調講演、中国通信機器大手ファーウェイの扱いをめぐって、メイン料理が冷めるほど、長く熱い質疑応答が続いた、とレポートしています。

日本の外務省も基金と初期資金として9億円を出すそうで、IISS経由で日本のことを世界に発信する意義は大きいと思います。

ただ、日本の現状からして単純に喜んでいいのか、迷うところがあります。

それというのも、私が1993年に出した『頭脳なき国家の悲劇』(講談社)という本で、日本には世界に通用するシンクタンクが存在しないことを明らかにした当時から、ほとんど状況は好転していないからです。大学の先生たちの水準も変わっていません。

そういう中では、世界から注目されるような日本からの発信というものがほとんどないのです。外国の有名なシンクタンクの成果物から学ぶという、明治時代と変わらない姿と言ってよいかもしれません。

確かに、中堅の研究者で外国の研究機関と密接な関係を築き、国際会議で発言するレベルの人たちは、昔より増えてきた感じはします。でも、発信ということになると、お寒いかぎりです。

そんな日本ですから、IISSに日本部ができ、日本との関係が深まったとしても、英語がそこそこにできる日本人が集う「カルテル」や「ハイソ」グループができて、それでお終いという予感さえします。

外交、安全保障などに関わるセレブの世界…。IISS主催の会合などに集うであろう人々の多くを知っている立場で言うと、悲しいかな、いまのところ日本発の調査研究など期待できそうにありません。(小川和久)

image by:  Shutterstock.com

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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