周囲の住民層に合わせた、全く違った店づくり
また、11年12月にオープンした代官山T-SITEは、蔦屋書店を核とした低層3階建の商業施設で、1階に本の売場や、スターバックスコーヒー、ファミリーマートを配置。2階に音楽CD販売、映画DVDレンタル、高級感あるカフェレストランが配置されている。
本は、世界の雑誌を並べた「マガジンストリート」をメインとし、人文・文学、アート、建築、クルマ、料理、旅行といった6つの専門書店が並ぶような構成となっている。専門性が全般に高い。
別棟にペットショップ「グリーン・ドッグ代官山」、多目的スペース「ガーデンギャラリー」、大人向けのおしゃれなレストラン・バーでパンケーキが名物の「アイビー・プレイス」がある。
こちらの代官山は枚方とは違って、最新の情報に触れたいクリエーター、ビジネスパーソン、研究者のニーズをくみ取ると共に、渋谷区・港区あたりの都心部タワーマンションに住むような人のライフスタイルを意識している。
このように、「T-SITE」では周囲の住民層に合わせて、全く違った店づくりになっており、従来の基本的に金太郎飴のようなどの店も似通った(商品構成こそ微妙に変えていたが)、TSUTAYAチェーンとは一線を画している。「T-SITE」の出店を打ち止めにして今後、どのような店をつくっていくのかは気になるところ。
16年11月オープンの「中目黒高架下」に入居した蔦屋書店は、スターバックスコーヒーが入居し、本とアパレル、雑貨を融合させてテーマ毎に売る編集を行っており、ライフスタイル、ビジネス、アート、文具の4シーンに店舗を分割。「T-SITE」のミニ版のような雰囲気となっている。もっともすぐ近くに、TSUTAYAのショップがあるので、店のコンセプトを変えてきた面もある。
これからの出店戦略をCCCは明らかにしていないが、ライフスタイル提案型でしばらく出店して、地域住民からの反響を見ていくのかもしれない。
他業種企業とのコラボレーションも進めており一例として、ホームズ新山下店(横浜市中区)では島忠とホームリビングを、APIT東雲店(東京都江東区)ではオートバックスセブンとカーライフをテーマに、書籍や雑誌から広がるライフスタイルを提案している。
ツタヤのチャレンジは、出版、音楽、映像の文化を守っていくことにつながるのか。「T-POINT」カードの勢力拡大をもたらすのか。90年代後半には2万店を超えていた書店の数は、現在は1万2,000店ほどにまで減少している。書店ビジネスが苦境から脱する術として、一石を投じられるのか。今後の動向を注視していきたい。
Photo by: 長浜淳之介