日本代表快進撃。なぜラグビーはこれほど人を熱くさせるのか?

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対戦時の世界ランキングが2位のアイルランドに勝利した日本代表の快進撃で、盛り上がりを見せるラグビーワールドカップ。その戦いぶりを食い入るように観て、あることに気づいてしまったのは、メルマガ『8人ばなし』の著者の山崎勝義さんです。山崎さんは、選手たちがしている個性的な髪型やひげの形について、戦国武将に共通するものがあると、観る者の「血をたぎらせる」ラガーマンたちの「覚悟」に思いを馳せています。

ラガーマンのこと

テレビでラグビーを観る。開催中のワールドカップである。と言っても、ゲームの解説ができるほどに詳しいという訳でもないし、録画してまで観るほどに好きという訳でもない。ただテレビを点けた時にたまたまやってさえいれば最後までは観てしまう。それも食い入るように観てしまうという程度には好きなようである。

それにしても、これほどまでに観る人を熱くするスポーツはちょっと珍しいのではないか。勿論どのスポーツだって熱くはなる。だがラグビーの熱さは明らかに質が違う。うまく説明できないので比喩的表現に頼る他ないが、何か原始的な闘争本能を直接的に揺さぶられ、その結果として人間なら誰でも持っている(それでいて普段は隠された)本能がそれを構成する分子レベルで発熱する、といった感じである。これが「血がたぎる」というやつなのかもしれない。

思えば防具らしい防具をほとんど着けず、全力でのフルボディコンタクトをやってのける訳だから選手の士気たるや凄まじいと言う他ない。スポーツにおける肉弾戦の極致である。

誤解を恐れずに言えば、それはまさしくバトル(戦闘)である。ボールを前に進めるという目的がありながらボールを前に投げられないというルールもあって、その戦いは基本的には、敵陣に突撃しては戦線を押し上げ、そうしておいてまたさらに敵陣深く突撃するといった展開となる。戦闘そのものではないか。これで雨でも降って泥まみれの戦いともなれば猶凄まじい。

そんなラグビーを観ていて気付いたことがある。選手たちが随分と個性的な髪型やひげ型をしているのだ。本来そういったことに関して比較的抑えがちの日本人選手でさえ、まるで漫画か何かの登場人物のようなルックスなのである。かと言って、ラグビー選手が殊更エキセントリックという訳でも決してない。戦っていない時は振る舞いも話し方も紳士そのものである。実際、引退した選手は見た目も雰囲気もエキセントリックの「エ」の字すら見当たらないといったくらいに落ち着いた様子である。

とすれば、彼らのエキセントリックな髪型やひげ型は専ら戦闘用ということになる。ちょうど当世具足を身に付けた戦国武将の変わり兜のようなものである。この時代を越えた奇妙な符合はちょっと面白い。

実戦においては決して合理的とは言えないような恰好をわざわざしてまでやり通すエキセントリックさに一体如何なる意味があるのだろうか。それはおそらく戦闘時と非戦闘時の極端なまでのオン・オフを切り替えるための外部スイッチのようなものではないかと思うのだが、どうか。

もしそうなら戦士が戦うために整えるべきはまず恰好からなのかもしれない。そして極限を求められる状況にある時ほど、その恰好は重要な意味を持つに違いない。こんなふうに思う時、改めてラガーマンの勇気というものにまた「血がたぎる」のである。

image by: MAG2 NEWS編集部

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ここにあるエッセイが『8人ばなし』である以上、時にその内容は、右にも寄れば、左にも寄る、またその表現は、上に昇ることもあれば、下に折れることもある。そんな覚束ない足下での危うい歩みの中に、何かしらの面白味を見つけて頂けたらと思う。

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