昨今何かと話題に上がるニセ科学ですが、科学的な裏づけも無い「いかがわしいもの」を妄信する人々に対して専門家はどう感じているのでしょうか。今回の無料メルマガ『アリエナイ科学メルマ』では著者で現役科学者のくられさんが、かつてのオカルトへの興味と、ニセ科学をネタとして楽しむに至った現在の考え方を記しています。
見捨てる/見守る/心中する ニセ科学の三叉路
先日、五本木クリニックの院長、桑満おさむ先生の著書『“意識高い系”がハマる「ニセ医学」が危ない!』の発売記念イベントにゲストとして出演してきました。
自分も基本的にインチキ科学に関して基本的にネタとして否定的記事を書いたりしているのはご存じかと思いますが、専業でやっているわけでもないです。
桑満先生はそこをもう少し切り込んでバッサバッサと斬るというのを医師であるということを伏せずにしかも実名で活動されている意欲的な先生で、その活動拠点となっているブログは何百万というPVだったこともあるそうで、こうした界隈では有名な先生でもあります。
楽屋で桑満先生とインチキ科学についての話をしていたのですが、自分の「ニセ科学」に対するスタンスというのが先生と意外と近くて、そもそも桑満先生も自分も月刊ムーなどのオカルト雑誌が大好きで、心霊現象とかUFOとか大好きすぎだった…というところがスタートしているという原点まで近いところがあります(笑)。
言ってしまえば、超常現象や怪奇現象が大好きだからこそ、それを調べに調べていくと「インチキ」でしかない…という結論になっちゃった。
実はこれはオカルト好きの1つの分岐点です。
そこで見捨ててしまうのか、ロマンとしてオカルトを楽しむか、それを認めないでハマるかという、大きな三叉路。
人間というものはみたいモノをみたい、聞きたいモノを聞きたい生き物ですから、心血注いだものがまがい物でした…というのは大きな失望になるので、その失望から逃れるために神秘主義に逃げてしまう気持ちはわからんでもありません。
インチキ科学や陰謀論を信奉している人はそうした反対意見には耳を向けることはほぼ無くて、自分がハマったことそれが詐欺でなかったと正当化するためにその対価を相手に支払い続ける、なかなか地獄なデスルートです
ただ欺す側はそうでもなく、最近ワクチン反対論者の医師が自分の子供にはしれっとワクチン接種をさせているみたいな話もあるように、欺す側は確信犯ですから、人というのものの「心」というものは本当に複雑だなと思います。
インチキ科学というのは、昔々は、町にかならず何個かあって、インチキ科学をかかげてインチキ商品をコソコソ売って儲けるみたいな…本当にどこの世界にもある小さい犯罪の1つでしかなかったものです。女性誌や週刊誌に「××ならこの商品」みたいなドヤり広告を出して、売り逃げするか、お叱りをうけたら名前を変えて別のところでコソコソまたやる…そういうセコい犯罪でした。
今や日本の大企業までもが、ナノイオンでどうのとか、プラズマうんぬんがスゴイとか、水素水を一流企業が売るなんて国になってしまいました。儲かれば正義…なんでしょうが、不景気からのインチキへの一流企業が流れていく、ドライヤーの宣伝文句に「ミネラル増量!」とか、日本の最高学府でさえ怪しいサプリの原料販売で空前の利益です。
それが最近、権力や金を得すぎて、社会的発言力がすごい状態で、~~を水にかえるマスクとか、名だたる大企業が本気で売り出してるわけで、そんな国がもはや科学立国とか言うのも恥ずかしいレベルではないでしょうか?
自分はもともと町にはびこる小さな欺瞞・小さい犯罪に関しては生物多様性の一環なので、科学的におかしいから断罪すべき…というスタンスではなく、ゲラゲラ大賞、話題のネタ程度の認識です。桑満先生も基本的にニセ科学はその香ばしさを愛でるものであった…はずなのに。
そのうち「それってインチキじゃないの?」と言うほうがマイノリティーになってしまうんじゃないか…そんな気さえしてきます。
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