多くの方を悩ませている、膝の痛み。本当に治せるものなら、多少高くても薬やサプリに頼りたい…と考えるのも無理はありません。今回の無料メルマガ『アリエナイ科学メルマ』では著者で現役科学者のくられさんが、サプリの成分でよく耳にする「グルコサミン」「コンドロイチン」について、その有効性を検証しています。
コンドロイチンとグルコサミンと軟骨
この間、ポータルの再掲記事で、コンドロイチンの話をしました。初出はだいぶ前のメルマガですが、しかし、今改めて考えても、そろそろ医薬品扱いは見直した方がいいんじゃないかと思う次第。
そういった承前の話は、ポータルの該当記事「信用できない医薬品もある:コンドロイチンって効果あるの?」を見ていただくとして。
今回はこのコンドロイチンと、同様に取り上げられることの多いグルコサミン、そして軟骨の仕組みなんかについて、もう少しクローズアップしていこうと思います。
そもそもコンドロイチンは軟骨の構成成分の1つです。
軟骨はコラーゲン線維と水をヒアルロン酸で束ねて、それをコンドロイチン硫酸によって柔軟性と弾力性を持った…みたいな感じで構造体になっています。
そしてコンドロイチンは栄養学的にはムコ多糖でしかないわけで、ムコ多糖類を摂取してもそれが体内に吸収されることはなく、当然口から入れるわけですから消化されます。
ちなみにコンドロイチンと同列で紹介されていることが多いグルコサミンはヒアルロン酸の構成部品なので、ぶっちゃけ同系列で考えても大差ないと言えます。
…ようするに、コンドロイチンやグルコサミンに効果があるなら、ブタの軟骨や鳥軟骨を食べても同様に関節痛に効く…ということになり(実際に消化される工程では同じと言える)、軟骨を食べれば軟骨が増える理論になります。
つまり、毛の薄い人が毛髪を食べれば毛が生える理論とは基本的に考え方は同じなわけです。怪しくなってきましたね(笑)。
関節中のコンドロイチンはそもそも生合成される(体内で生み出される)もので、しかも複合的な成分なのでその成分だけを足すだけでは解決しない難物です。
実際に関節内にヒアルロン酸を注射するという治療もありますが、あくまで一時的に症状を緩和するなどで根本的治療にはなり得ていません。
こうした現状を考えても、1、2gのコンドロイチンを飲んで、それが分解されて、それがわざわざ関節の再生に働くと考えるのはかなり無理があります。
放射性物質で体の外からマーキングしたコンドロイチンを飲んで、それが関節にちゃんと移動しているかという調査も行われましたが、移動していない、という結果が出ています。
こうしたものを含め、多くの新しい研究を評価していくと、コンドロイチンが医薬品として扱われるのはそろそろ再評価の時代にきていると判断すべきです。
多くのまともな臨床試験で効果が出ておらず、生化学の試験でも有用性が疑問視されているモノを高いお金を払って買う必要はないと言えるでしょう。そのお金でちゃんとした病院でちゃんと診てもらうほうがコスパが良いといえます(笑)。
コンドロイチンが医薬品に指定された具体的な経緯は調べきれませんでしたが、最近の科学知見においては、お祈り程度の効果もない…と言っても良いでしょう。
さらに言うなら、効果があるなら、軟骨を食べた方が良い…というのも、コンドロイチンどころかムコ多糖類一式が全部入ってるし大量に摂取できて安いわけでして、そう考えるに至るのが「科学的判断」ではないでしょうか。
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