内外から疑問の声。「クルーズ船」問題を各紙はどう報じたのか?

 

個室待機要請後の感染拡大は?

【読売】は3面の解説記事「スキャナー」で、クルーズ船について書いている。見出しから紹介しよう。
船内隔離 誤算続き
政府、水際重視→感染増 対応後手に
海外報道 「危険な監獄」「人権侵害」

《朝日》同様、下船した人に話を聞いていて、簡単に紹介している。《読売》は「政府の対応は当初、感染者の入国を阻止する水際対策重視で、船内の感染状況を甘く見た感は否めない」と珍しく政府に対して批判的なことを書いている。感染者が10人出たとの情報が伝えられ、政府は急遽、乗客に個室での2週間待機を求めることを決める。しかし、感染者は用意した専門病院のベッド数を上回る勢いで増え、政府は常に後手に回ることに。

この船内隔離は米政府からも「最良の方法」と評価され、もしすぐに下船させていたら国内でパニックが起きていたと政府高官は話しているらしい。誤算は乗員への対応で、「船長の判断任せで、感染防止策が徹底されなかったこと。トイレや浴室を共同使用していた」ことだと。

《読売》は検証の論点をうまくまとめている。すなわち「船内で感染が拡がった時期が、個室待機を要請した2月5日の前か後か」が重要であり、専門家会議の座長は「乗客の発症が7日をピークに減っていた」ことから、多くは個室待機の前に感染していたと結論付けているのに対し、《朝日》も紹介していた岩田健太郎教授は「船内はものすごい悲惨な状況で怖いと感じました」と言っている。また船内に入った別の医師は「発熱や咳などの症状がある乗員が多かった。相部屋で隔離はされていない様子だった」と語っているという。

《読売》は最後に、外国メディアによる批判を紹介している。米国では、ニューヨークタイムズ紙は「「こうしてはいけない」と教科書に載る見本」という専門家の意見、USAトゥデイ紙は国立感染症研究所長の「感染を防ぐという意味ではまったく効果はなかった」との発言を、それぞれ紹介している。ロシア国営テレビでは司会者がクルーズ船のことを「監獄」と表現した。

uttiiの眼

発症のピークから類推できることはどこからどこまでか、キチンと議論して欲しいと思う。岩田氏の船内観察は、直ちに2月5日以降の船内感染拡大を意味するものではないかもしれないが、それでも、ある重要な示唆を与えてくれている。「安全ゾーン」と「危険ゾーン」の区別が曖昧だったというのは決定的ですらある。

最も重大なのは、私自身は「検疫官の感染」という事実だと思っている。防護のプロでもあるはずの検疫官が船内で感染したのは、「危険」なエリアを「安全」と間違えたからではなかったのか。検疫官が間違えるほどであれば、乗員は勿論、乗客が正しい区分に従って行動したとは思えない。

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