内外から疑問の声。「クルーズ船」問題を各紙はどう報じたのか?

 

医学史に残る不祥事

【毎日】は2面で、問題点を整理し、識者3人のコメントを「ミニ論点」の形で掲載している。まず時系列的な整理から。1月25日に香港で下船した男性以外に船内に感染者がいると分かったのは2月5日。この日までは乗客はそれまでと同じ行動を取り、バーティーなども開かれていた。そして、感染はこの間に広まり、5日以降はコントロールができていたというのが政府見解。

しかし、《朝日》《読売》の紹介していた岩田健太郎教授の指摘。あるいは、「乗員の新たな感染が分かった時点で、各国政府と協力して下船させる方針に転換すべきだった」という医師の批判などがある。

識者3人のうち、医療ガバナンス研究所理事長、上昌広(かみ・まさひろ)氏の批判を紹介する。まず上氏は「乗客らを一律にクルーズ船内で隔離することには意味がない」と断言。「到着後はすぐに下船させ、症状に応じて個別に対応すべきだった」とも。こうしたケースで感染拡大を防ぐには下船が必要だという論文がたくさんあるという。

検疫は本来、政治とは一線を画し、「検疫所長が旅行者の健康と人権を考えて隔離の判断をする」もの。今回、「東京五輪の開催や支持率などの雑念が入った政治家が、超法規的に事実上の隔離を判断した。法に基づかない身体拘束をしているとも言え、医学史に残る不祥事となった」と言い切り、この「政治家の介入」に疑問を挟まなかったメディアにも責任の一端があるという。

uttiiの眼

上先生には新型インフルの折、取材で何度もお世話になった。当時も今も、その峻厳な批判の舌鋒は鋭い。大型船の感染管理は非常に難しく、感染拡大を防ぐためにはまず何よりも下船させることが必要なのだという指摘は重要。

政府関係者は「物理的に無理」と答えるかもしれないが、とにかく下船させる方向で受け入れ施設を確保するよう努力をすべきだったのではないかと私も思う。まさしく、これから検証の最重要論点である「船内隔離後に感染は拡がったのか」という点とも関わって、あり得る選択肢だったのか、そうではなかったのか、今からでも吟味されるべきだろう。

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