もはやこの国の政府に、危機管理能力を求めるのは無駄なことなのでしょうか。新型肺炎の水際対策に失敗し、クルーズ船での防疫でも大失態を演じた安倍政権に、世界中から厳しい声が上がっています。人気ブロガーのきっこさんは『きっこのメルマガ』で今回、ワシントン・ポスト紙に掲載された厳しい記事の内容を紹介。さらに東京五輪までの新型肺炎の収束など不可能だとし、その理由を記しています。
世界から批判される安倍政権のウイルス対策
テレビをつければ、来る日も来る日も朝から晩まで「新型コロナウイルス」のことばかりで、もうウンザリしている人も多いと思い、このメルマガではできるだけ触れないようにして来ました。しかし、前回は「シミチョロ」のコーナーで「東京マラソン」について触れてしまいました(「五輪も返金なしか。新型肺炎で東京マラソンが作った前例の意味」。そして、とうとう安倍政権が最悪の大失敗をしてしまったため、この「前口上」でも取り上げざるを得なくなってしまいました。
それは、陰性と判断されてダイヤモンド・プリンセスから22日に下船させた栃木県の60代の女性が、下船の2日後に発熱して陽性だったと判明したという報道です。何よりも問題なのは、この女性が厚生労働省の指示で、自宅の最寄り駅まで電車に乗って帰ったという点です。当初は、保菌者に直接触れるなどの「濃厚接触」でしか感染しないと説明されて来ましたが、ダイヤモンド・プリンセスに乗船した厚労省の職員が、乗客の誰とも接触していないのに感染したことから、感染症の専門家は「保菌者が触れたドアノブや手摺りなどに、後から来た人が触れただけでも感染の可能性がある」と指摘しました。
この栃木県の60代の女性の前にも、19日に500人、20日にも500人の高齢者が下船していますが、このうち計23人の検査をし忘れたと厚労省は発表しました。また、ちゃんと検査をして陰性だった数百人も、全員が安全だとは言い切れません。栃木県の60代の女性のように、一度目の検査では陰性でも、その後に陽性に変わった例は数多く報告されているからです。そうした人たちを公共交通機関で帰宅させてしまって、本当に大丈夫なのでしょうか?
今回の報道がなされる前にも、すでに欧米の主要メディアは日本政府の後手後手の対応を厳しく批判しており、ニューヨークタイムズ紙などは「日本政府の危機管理の低さを各国政府は反面教師とすべき」とまで報じていました。そして、米政府がチャーター機で連れ帰った300人超のアメリカ人の中からも、新たな感染者が18人も見つかったことで、日本政府への批判は加速しました。そんな時に、今回の報道があったのです。
今、日本のダイヤモンド・プリンセスは、発生元の中国の武漢市に次ぐ「第二の感染源」として世界中から注目されているため、多くの国が日本の報道を即日、それぞれの国で大きく報じています。今回の栃木県の60代の女性のニュースも、すぐに各国が大きく報じました。BBCやCNNを始めとした欧米の主要メディアは、今回の問題をトップニュースで報じ、日本政府の対応を厳しく批判しました。
たとえば、CNNでは「最初の検査で陰性だった人が後から陽性になった例が数多く報告されているのに、どうして日本政府は下船後に乗客を隔離せず、公共交通機関などで帰宅させたのか?日本政府が先頭に立って感染を拡大させているのではないか?」と批判しました。そして、ワシントンン・ポスト紙も、22日付(日本時間23日)で、ジェフリー・キングストン教授によるとても厳しい記事を掲載しました。
キングストン教授は日本在住で、テンプル大学の日本校で歴史学を担当しています。専門は日本とアジアの歴史で、以前はジャパンタイムズ紙にコラムを連載していました。とても人気のあるコラムでしたが、ある日のこと、突然、打ち切りにされてしまったのです。すると、それからジャパンタイムズ紙には、安倍政権による政府広告が掲載されるようになりました。キングストン教授は、安倍首相の数々の疑惑や政策の失敗などを批判するコラムを書いていたのですが、それを面白く思わなかった安倍官邸が、政府広告との交換条件として安倍政権に批判的なコラムを打ち切りにさせたのです。