【カンブリア宮殿】成長を続ける奇跡の経営術「キッコーマン」

 

キッコーマンの街・野田~醤油蔵から世界へ

江戸川の対岸にあるキッコーマンの本拠地・野田市。大にぎわいの地元の店「鳥善」の客のお目当ては、この店が30年前から出す名物「極辛大根煮」(400円)。醤油と唐辛子などで20日間も煮込むという。その醤油はもちろんキッコーマンだ。

野田はまさにキッコーマンの街だ。長年、市民に親しまれてきた「キッコーマン総合病院」。看護師や医者はみんなキッコーマンの社員だという。

一方、巨大な門構えのキッコーマン創業家・茂木家の邸宅は1956年、市に寄贈されて「野田市市民会館」に。館内にいくつもある部屋は、市民が自由に使えるように解放されている。

アスレチックで有名な「清水公園」も、創業家一族が市民のために作ったものだ。

キッコーマンが野田で産声をあげ、すでに100年が過ぎた。江戸時代から野田近隣で醤油を作っていた醸造蔵。6つの茂木家と髙梨家、さらに流山の堀切家。この8つの家が、生き残りをかけ決断をしたのが一つの会社になること。1917年に野田醤油を設立。そこで選ばれた最もおいしい銘柄の醤油がキッコーマンだった。

今、北欧フィンランドを訪ねると、スーパーの売り場にはずらりとキッコーマンの商品が並んでいる。そこにはポン酢まで。家庭で作る北欧料理には、当たり前のように醤油で味付けが行われていた。

「キッコーマンの醤油は欠かせません。お肉の味を味わい深くしてくれるんです」と、愛用者は言う。和食で醤油を普及させるのではなく、現地の食文化に浸透させていく。これが茂木のアメリカ攻略以来の戦い方だ。

ヨーロッパの醤油市場を開拓するために走り回るキッコーマン・トレーディング・ヨーロッパの澤野順一。やって来たのは、オーストリアの首都ウィーンだ。すでに攻略済みだというが、この日は影響力のある料理雑誌の記者などを集め、あるイベントを開こうとしていた。準備していたのは銘柄を伏せた3種類の醤油。その一つがキッコーマンだという。

「オーストリアは醤油が知れ渡っていますが、新しい醤油が入ってくると、それはキッコーマンより安い。中国、タイ、ベトナム。値段は半額ですから、品質がどれだけ違うかしっかり分かってもらわないと、消費者は流れてしまうんです」(澤野)

これは、醤油市場を切り開いた後に参入してくる低価格のアジアの醤油への対抗策。キッコーマンの香りやうまみが圧倒的に違うことを発信し続けなければ、勝ち残ることはできない。
参加者からは「びっくりしました。キッコーマンのものが唯一香りを感じました」「ひとつだけ素晴らしい香りがしました」といった声が聞かれた。

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