徳田医師が明かす「PCR検査」の真実。感度・特異度・偽陰性を正しく理解する

 

プライマーの長さと特異性

特異度は、感染していない人で検査が陰性となる割合である。特異度が高いと偽陽性の割合が低くなるので、非感染者を感染者とみなす割合が減り防疫には特に有用である。前回はデータからみた特異度の最低値99.997%に基づいて防疫検査を行った場合について述べた。今回は、新型コロナウイルスのリアルタイムRT-PCR検査の特異度が、実は検査の操作からみてほぼ100%であることを論じる。

PCR検査の増幅連鎖反応をスタートする際、プライマーと呼ばれる鋳型核酸物質のペアを用いる。これが結合しなければ連鎖反応はスタートしない。十分な長さを持つプライマーは配列する塩基が長いので特異性が極めて高くなり、新型コロナウイルスRNA以外の核酸物質に結合することはない。

一般的にPCR検査の至適プライマーの長さは18-22塩基。実際、今回議論している新型コロナウイルスPCR検査の場合はキットによって異なるが101-393塩基配列となっている。一般的なPCR検査の塩基配列の長さの約10倍である。一般的なPCR検査はもともと特異性の高い検査であるが、新型コロナに対する検査キットのプライマーの特異性は極めて高くなるように開発されているのだ。

極まれな偽陽性の3パターン

PCR検査の特異度は極めて高いことが検査の原理からみるとわかったと思う。では、極まれではあるが、新型コロナウイルスに感染していなくても検査が陽性になることがある。それは下記の3パターンである。

  1. 感染でなくとも、エアロゾールとして空中を浮遊しているコロナウイルスがたまたま検査対象者に吸われて鼻腔に張り付いていたものを採取すること。
  2. 感染でなくとも、検査対象者の周囲環境にコロナウイルス(あるいはその残骸)が存在していて、それに対象者がたまたま手で触れて、それで鼻を触ったのが検出されてしまうこと。
  3. 検体を扱う検査者が、誤って他の陽性者の検体で汚染させてしまうこと。

これらが起きる場面を想像してみてほしい。可能性は極めて低いのだ。岩手県のように、このウイルス感染者がゼロ、または感染者がほとんど出ていないニュージーランドのようなセッティングで行うと、上記の3つともに起こることはなくなる。環境中の新型コロナウイルスの迷入は無いし、他人のウイルスによる汚染も無い。すなわち、特異度は100%となるのだ。

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