2.アパレル企画・生産の中国依存
日本のアパレル企業が取り扱っているアパレル製品のほとんどが中国製品、中国生産である。
初期の中国生産は、日本国内でデザインし、パターン、縫製仕様書を作成し、生地、付属等を揃えて、中国に送り、縫製だけを依頼していた。
しかし、やがて生地や付属を現地調達するようになった。
更には、日本の商社・企画会社チームがサンプルを提案するようになった。アパレル企業は、サンプルを見て発注するだけで商品が調達できるのだ。
次に、サンプル提案から生地付属調達、輸出入までできる中国のOEM工場が登場した。
日本のアパレル企業は小売業に変化したのである。それでも、店舗流通中心の時代は日本企業が必要だった。中国企業が日本市場で店舗運営を行うのは困難だからだ。
しかし、ネット通販が主体になれば、最早、日本企業は必要ない。日本に販売法人を設立すればビジネスはできる。
多分、日本のアパレル企業が半減しても、消費者は気づくこともないだろう。市場には十分な量のアパレル製品が供給されるに違いない。
3.トレンド訴求から素材・機能訴求へ
これまでのアパレル企業は、トレンド情報を基本に商品計画を組み立てていた。トレンド情報とは、欧米の年2回のコレクション情報、テキスタイル見本市のトレンド情報等を指す。アパレルのコレクションは、店頭展開の半年前に行われる。それを分析し、前年実績や競合店情報を加味して、商品計画を組み立てる。最終的に、店頭展開の二カ月前には商品計画を決定し、商社や海外の縫製工場に発注することが必要だ。
商品企画の確度を上げるためにギリギリまでリードタイムを短縮し、短サイクル生産を行う。
その結果、テキスタイル開発が間に合わなくなり、市場にある素材を使う企業が増えた。素材での差別化ができないので、形に依存することになる。デザインはトレンド情報依存に陥り、ブランド間の差別化が難しくなる。コロナ以前も多くのアパレル企業がそんな課題を抱えていた。
一方、ユニクロや無印良品、スポーツウェア、アウトドアウェア、ワーキングウェア等は素材開発を行い、リードタイムの長い計画生産を行っている。在庫を持たずに、売れ筋を追いかける手法ではなく、ある程度の量をまとめ、素材開発を行い、最適な地域の工場で生産しているのである。
皮肉なことに、ファッションアパレルと呼ばれる一般のアパレル企業より、スポーツウェアやアウトドアウェア等が新素材、新機能を訴求し、トレンドをリードするようになっている。
最早、トレンド中心の商品計画には無理がある。そんな市場変化の中で、コロナが止めを刺したと言うべきかもしれない。