バイデン大統領でも解決不能か。トランプが残した莫大な負の遺産

 

バイデン政権下でより強硬なものとなる対中政策

国際情勢に目を向けてみても、バイデン新政権が対応しなくてはならない問題が山積しています。特にトランプ政権が作り出した“世界からのアメリカの孤立”は、そう簡単には克服できそうにはありません。

例えば、オバマ政権時代に端を発し、トランプ政権時代に一気にエスカレートした米中対立は、そう簡単に解決するものではありません。米国ビジネス界からの要望を受けて、米中通商問題という側面では改善への希望があるかと思いますが、そのためには、退任間近になってトランプ大統領が乱発している対中制裁の発動に対していかに対応し、ベクトルを反対に向けるという難題が立ちはだかっています。

加えて、米中関係の迅速な改善を阻むのが、中国政府の強権化に伴い、香港の中国化の加速や新疆ウイグルやチベットでの人権侵害の疑念が高まる中、人権擁護という原理原則を高らかに掲げなくてはならない民主党政権の理念の存在です。もちろん、香港問題や新疆ウイグルでの問題といった国際的な懸念事項に対して、バイデン新政権は目を瞑るべきといっているのではありません。厳粛に、事実に基づいた対応を期待したいのですが、人権問題が外交の前線に掲げられる限りは、人権問題での介入を著しく嫌う(そしてそれを極限に恐れる)北京政府と中国共産党との迅速な和解と接近は期待できないと私は思います。

そして、南シナ海での領土・領海的な主張や東南アジア諸国への軍事的な挑発といった強硬姿勢と、一帯一路政策を通じた経済的な支援とつながりの強化という【飴と鞭】と例えられる中国のやり方に対して、バイデン新政権は決して看過することはないでしょう。

その表れが、トランプ政権が進める米軍のアジアシフトのさらなる加速と強化、中国(そしてバイデン氏が忌み嫌うロシア)の野心の対象となるアフガニスタンやイラクからの米軍撤退方針の即時撤回、インド太平洋地域における対中包囲網の強化といった施策は、確実に中国への警戒心の高さを示していると言えます。「同盟国との連携を強化し、中国の野心を封じ込める」というバイデン氏の言葉にも覚悟の強さが現れています。そして、その背後には、超党派で形成されている中国脅威論が存在するため、恐らく、バイデン政権下では、トランプ政権下に比べ、アメリカの対中政策はより強硬なものになると思われます。

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