MicrosoftとAppleは第三次世界大戦の主役になるか?「ARの軍事利用」が世界地図を塗り替える可能性

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AR(Augmented Reality = 拡張現実)が世に登場して久しいですが、試行錯誤を繰り返しながらさまざまな進化を遂げてきました。「楽しい」「便利」なイメージが強いARですが、今後はより大きな目的として使われるようになっていくようです。今回のメルマガ『週刊 Life is beautiful』では「Windows95を設計した日本人」として知られる世界的エンジニアの中島聡さんが、MicrosoftのAR戦略に言及。本格的な軍事利用が始まったことを紹介しています。

プロフィール中島聡なかじまさとし
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

(この記事はメルマガ『週刊 Life is beautiful』2021年4月13日配信分の一部抜粋です。続きはご購読の上、お楽しみください)

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ARのキラーアプリは軍事利用 Microsoftが実用化へ

「キラーアプリ(Killer Application)」とは、それだけでは役に立たない技術やプラットフォームを、それだけで価値のあるものに変えてしまうほど、世の中にとって役に立つアプリケーションのことです。

Microsoft の Windows にとっては、Microsoft 自身が出した Office がキラーアプリだったことは良く知られていますが、もっと大局的に見れば、パソコンにとってのキラーアプリが Windows + Office だったとも言えるのです。

どんな技術でも、それだけでは役に立たず、なんらかのアプリケーションが必要なため、新しい技術が作られると、業界全体で「キラーアプリ探し」が行われるようになります。

ARもそんな「キラーアプリ探し」が長年行われていた技術です。2013年に一般消費者向けに発売された Google Glass は完全に失敗に終わったし、Apple の(iPhone/iPad 向けの) ARKit も、まだまだ「面白い技術」レベルにとどまっています。

そんな中で、健闘しているのが Microsoft です。一般消費者市場ではなく、エンタープライズ市場にフォーカスしたアプローチで、一歩ずつ、着実にコマを進めているのです。

そんな中で、まさにARの「キラーアプリ」と呼ぶべきアプリケーションの発表がありました。軍事利用です

Microsoft は2018年から、米軍向けにプロトタイプの作成をしていましたが、今回、それが実用化のフェーズに移ることが決まったのです。

Microsoft の発表によると、兵士向けの特注 AR ゴーグルを12万セット、10年間に渡って、$21.88 billion という巨額の契約になるそうです(AR と VR の両方を合わせた市場規模は、IDCのレポート によると2020年で $12 billion)。

詳しい仕様などは公開されていませんが、軍事利用であることを考えれば、

  • メッセージ
  • 方位・位置情報
  • バーチャル・マップ
  • ナイトビジョン
  • 敵・味方の識別
  • 環境・健康センサーデータ

などの表示に使われるだろうことは明らかです。

技術としてこなれたものになるまでには、数年はかかると思いますが、ひとたびそうなれば、兵士たちにとって「なくてはならないデバイス」になることは確実で、まさに名実ともに「キラーアプリ」と呼べる存在です。

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