怒りや妬み、悲しみや不安など負の感情に支配されると、自分自身や人間関係にさまざまな問題が生じてしまいます。そういった感情をコントロールできるのが大人とも言えますが、そうなるためには、子供の頃に感情と上手に向き合う習慣をつける必要があります。今回のメルマガ『子どもを伸ばす 親力アップの家庭教育』では、著者の柳川由紀さんが負の感情を否定するのではなく、積極的に認めていく「メタ認知」や「感情のラベリング」などの手法をわかり易く伝えています。
負の感情は消さなくてもいい
1.負の感情を持つときは?
怒り、憎しみ、嫉み、悲しみ、恐れ、不安…これらはいわゆる「負」の感情です。正負の基準は「自分が苦しんでいる」ことです。こうした感情は、現状を変えようとするときや、自分が予期しないことが降りかかったとき、などに起こります。
例えば、
「何であの人ばかりいい思いをするんだ」
「人前で話すのは緊張する」
「これまでの方法を変えるのは不安」
「大切なペットが死んでしまった」
などです。人間の本能は変化を嫌います。
ですから、負の感情がわき上がってくるのは、現状を変えさせまい、とする脳の戦略と言えます。負の感情が出てくると「やっぱりやめよう」と言う気持ちになり、現状を変えるための一歩を踏み出しにくくなるため、脳としては現状維持ができるからです。
2.負の感情を認める
脳が出す負の感情を無視したらどうなるでしょう?脳は、気づくまでさらに強く負の感情を起こさせます。負の感情が大きくなるのは、無視したり、消そうとしたりするからなのです。ですから、反対にその感情をしっかりと受け止め、認めましょう。
「ああ、今私は、あの人に嫉妬している」
「人前で話すのは初めてなのだから緊張して当たり前だ」
「大切なペットが死んでしまって、私はとても悲しいんだ」
このように、客観的に自分を認識している状態にしましょう。これは心理学用語で「メタ認知」と呼ばれます。こうするだけで、負の感情の度合いを下げることができます。そして「だから、どうしようか」と今後について新たな視点で考えることで、感情をコントロールできるのです。
3.感情を言語化、見える化
負の感情は認めるだけよりも、言語化、見える化する方が、より度合いが下がります。これは、恐怖心や攻撃性を司る脳の部位「扁桃体」の活性を抑えるからです。
感情を言葉で表現すること(自分の気持ちに名前をつけること)を「感情のラベリング」と言います。また、ラベリングした感情を紙に書き出すことも同様の効果があります。これは「エクスプレッシブライティング」と呼びます。書き出して客観的に見ることで、より一層、負の感情が小さくなります。
負の感情は、無視したり消したりするのでは無く、しっかりと言語化、見える化する方が、気持ちが安定することが分かっています。加えて、ストレスの回避になることも分かっています。(※1)
親として、子供が自分の感情を言語化、見える化できるよう日頃から、「感情のラベリング」をする習慣をつけさせましょう。
(※1)社会心理学者ロバート・ビスワス=ディーナー博士の研究。参照:『ネガティブ名感情が成功を呼ぶ』(ロバート・ビスワス=ディーナー著 草思社)
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