北方領土返還などあり得ない現実。ロシア軍が着々と進める「核戦争訓練」の不気味

 

オホーツク海の「穴」を塞ぐ

ところで、松輪島へのバスチョンの展開は、それ単独の動きではないようです。ロシア国防省の機関紙『赤い星』は、カムチャッカ半島に駐屯する地対艦ミサイル旅団(第520沿岸ロケット旅団)のバール及びバスチョン地対艦ミサイルが機動展開訓練を11月末に実施していたことを明らかにしています。

Бастион и Бал – в умелых руках │ 機関紙『赤い星』

この記事によると、地対艦ミサイル部隊は海軍歩兵旅団のBTR-82A装甲兵員輸送車の支援を得て輸送艦に分乗し、護衛の水上艦艇及びMiG-31とともに海上機動展開したとされています。これがカムチャッカ半島内でのことのなのか、松輪島への展開を指しているのかは記事からは判然としないのですが、おそらく後者が含まれていたことは確実でしょう。松輪島に展開したのが1個中隊であることを考えると、もう1個中隊はカムチャッカでも行動したのではないかと思われます。

地図に円を描いてみるとわかりますが、松輪島にバスチョンを展開させれば、カムチャッカと択捉島から発射されるバスチョンと合わせて、オホーツク海の太平洋岸は一応塞ぐことが可能になります。

さらにロシア軍はこれに先立つ11月22日、択捉島に配備されたS-300V4防空システム(ロシア軍は単に「クリル列島で」としか発表していないが、S-300V4は択捉島にしか配備されておらず、衛星画像でもこのシステムが移動していないことが確認できる)による防空訓練を実施しています。

На Курилах состоялась тренировка по отражению авианалёта ракетами комплекса С-300В4 │ ロシア国防省

こうした前後の状況をつなぎ合わせるならば、ロシア軍は今年11月に入ってから大規模なオホーツク海防衛訓練を実施しており、松輪島へのバスチョン配備はその一環であったと理解できるでしょう。

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