SSBNの動き
さらに、「要塞」によって守られる側、つまりSSBN自体の動きもこの時期には活発化していたことが衛星画像によって確認できます。
11月初頭段階においてはSSBNは巡航ミサイル原潜(SSGN)や攻撃型原潜(SSN)とともにカムチャッカの原潜基地に留まっていたことが確認できますが、11月1日には955型(ボレイ級)の1隻が埠頭を離れ、港の北部にあるミサイル装填施設に接岸しています。一方、11月14日には955型のうち1隻が完全に港から姿を消しましたが、29日には再び埠頭に2隻(667BDR型1隻と955型1隻)、ミサイル装填施設に1隻という状態となっています。
このうち、29日にはミサイル装填用クレーンから長いものがぶら下がっている影がはっきり確認できるので、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を装填ないし積み下ろししたものと考えられるでしょう。
これらが指し示すのは、太平洋艦隊のSSBN部隊が何らかの大規模な訓練活動を準備しているということだと思われます。通例、ロシア軍は毎年9月頃に軍管区レベルの大演習を実施し、その後10-11月頃に戦略核部隊による大演習を実施するという訓練サイクルを取ってきました。つまり、通常戦争が全面核戦争にまでエスカレートするところまで一通りやっているわけですが、今年はまだ核戦争部分の訓練が行なわれていません。
その理由は明らかでないものの、おそらくは近いうちに核戦争訓練が始まるのではないかと思いますし、オホーツク周辺での地対艦ミサイルの展開や防空戦訓練はその下準備と見ることができるでしょう。この点からも、オホーツクがロシアにとって「核の要塞」であることが確認できると言えます。とすると、やはり軍の制服組にとっては北方領土を手放すなど言語道断、ということになってしまうこともまた、ここから読み取れてしまうわけなのですが。
(メルマガ『小泉悠と読む軍事大国ロシアの世界戦略』2021年12月6日号より一部抜粋。全文はメルマガ『小泉悠と読む軍事大国ロシアの世界戦略』を購読するとお読みいただけます)
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image by: Козинцев, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons