●国語力を大幅にアップする親子日記
わたしがこれまで担任した教え子のお父さんの中で、とても有意義な楽勉を実践していた方がいる。
小学校1年生のAさんは入学したときから、質的にも量的にも書く力がずば抜けていた。低学年の子が作文で自分の気持ちを書くことは難しいが、Aさんは個性的で感性豊かに自分の気持ちや様子を書くことができた。
その秘密を聞くと、幼稚園の年長のときから毎日、お父さんと親子日記を書いていたという。お父さんが多忙で、いつも帰りが夜遅くなるので、お母さんが心配して親子のコミュニケーションのために日記を始めることを提案したそうだ。
最初はお母さんに字を教わりながら大学ノートにひと言ずつ書いていたAさんだったが、毎日書いているうちに、1年後にはノート1ページを楽に書けるようになった。
幼稚園であったこと、友達や先生のこと、遊びのこと、ケンカのこと、がんばったこと、見つけたことなどいろいろなことをAさんは書き、お父さんはそれに対する返事や感想、考えなどを書いた。
もちろん、気が乗らない日はひと言しか書かないときもあったが、書きたいときはたくさん書いた。無理をしないことが大切だ。
書くことは内面にあるものを表面化させる手段であり、会話だけでは分からない考えや内面が表れてくる。書いたものを読み合うことでお互いの理解はとても深まる。
親子日記は文章力や文字力を身につける上で最高の楽勉であり、おそらくAさんはそれ以上の大きな力を得ただろう。
親子日記を実践する上で、大切なことは強制しないこと。子どもが書かないことをいつもしかるようならばやめた方がいい。楽しく続けるために親が工夫をするべきだろう。
そして、書いた内容や書いたこと自体を基本的にほめ、共感的に返事を書く。お説教のようになると、子どもは書かなくなってしまう。
楽しく書ければこれほど子どもの国語力をアップさせ、言語表現という地頭を鍛える楽勉はない。ぜひ、親子日記を試してほしいものだ。
初出「親力養成講座」日経BP 2007年9月7日
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