プーチンはどう動く?フィンランドとスウェーデンNATO加盟に反対するトルコの思惑

 

フィンランドの場合

ロシアとおよそ1,300キロにわたり国境を接しているフィンランドはこれまでNATOには加盟せず、軍事的には中立を保ってきた

第二次世界大戦中にソ連に軍事侵攻された経験をもち、ロシアを刺激することを極力抑えてきた。

フィンランドの軍事的な安全性は、自国の軍事的な抑止力とロシアとの友好関係により守られてきた経緯がある。とはいえ、フィンランドは1995年のEU加盟を機に、公式には“中立”の政策から軍事上の非同盟の立場を転換。

近年は、ロシアの威圧的な態度が強まるなか、隣国であるスウェーデンとの情報交換や、NATOとの“演習”という形での参加で、NATOへの接近を強めてきた。

フィンランドの民間放送局であるMTVが最近実施した世論調査によれば、同国のNATO加盟賛成は68%、反対は12%である。別の報道によれば、左派連合を例外として、フィンランドの国会議員の過半数と大半の政党がNATOへの加盟を支持しているという。

スウェーデンの場合

スウェーデンは、第二次世界大戦中も“中立”を保ってきたほか、過去200年にわたり、軍事同盟への加盟を避けてきた。スウェーデンの中立政策の始まりは1834年にまで遡る。当時の国王カール14世ヨーハンが中立を宣言した。

かつては、強大な軍事力をもちバルト海周辺を支配してきたスウェーデンも、しかし度重なる戦争の結果、ロシアに領土を奪われ、国力が大幅に低下する。小国となってしまったスウェーデンが、今後の国際情勢にどう関わっていくべきか、考慮したうえでの中立政策であった。

さらにいえば、起こり得るだろう、英国とロシアとの戦争に備える目的もあった。両国の仲介役となりえることで、国際政治の中心的な存在になろうとした。

地政学的な背景もある。スウェーデン独自の「小国」意識に加え、19世紀半ばには、スウェーデン、デンマーク、ノルウェーの北欧3カ国を一体とする「スカンディナヴィア主義」と呼ばれる復古主義的な思想と密接に関係した同胞意識が生まれる。

これにより、北欧諸国における戦争の火種は明確に減少していった。

知られざる軍事大国 フィンランドとスウェーデン

“中立”を保ちながらも、しかしフィンランドとスウェーデンがともに“軍事大国”であることは、あまり知られていない。

過去に何度もロシアに攻め入られてきたフィンランドは、現在においてもロシアによる侵攻を含むさまざまな危機に耐えられるよう、国民を“総動員”できる形での防衛体制を整えてきた。

スウェーデンは、「積極的外交政策」と「重武装中立」のもと、自国の安全保障と中立政策を維持していくために、1960年代まで防衛を目的とした核開発を進め、実際に模擬核実験を行う段階にまでいたる。

そもそもフィンランドの1人当たりのGDPはドイツ以上。加えて、フィンランドには物資がある。主要な燃料や穀物は少なくとも6カ月分、製薬会社が輸入医薬品の3~10カ月分を戦略的に備蓄することが義務付けられている。

戦闘要員も豊富。徴兵制があり、フィンランドの成人人口の3分の1が予備役であり、“ヨーロッパ最大級”の軍隊を結成できる。

スウェーデンは、「重武装中立」を標榜しながらも、しかし冷戦初期から英米を中心に西側諸国との軍事的な協力を秘密裏に模索、現在は、NATOの軍事戦略においても重要な役割を期待されるまでにいたった。

スウェーデンは、5Gの技術も含め、IT技術が豊か。北朝鮮の情報通信網も整備したとされる。

両国がもしNATOに加盟すれば、情報分野を含む貴重な軍事技術をNATO側に提供できることはいうまでもない。

元米国防総省・NATO高官のジム・タウンゼント氏によれば、スウェーデンとフィンランドは、陸、海、空、そして情報分野において、軍事的に多くのものをNATOにもたらすという。

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