つまり、「救急医療管理加算を算定する救急搬送件数200台/年以上の医療機関及び三次救急を担う医療機関」以外に勤務する看護師は、賃上げの対象から漏れる。発熱外来などの診療所に勤める看護師さんや、入院することができないコロナ患者の在宅での対応を行ってきた訪問看護師さんたちは、「大きな病院に勤めていない」というだけで、不公平な措置になっているのです。
厚生労働省が6月6日に公表した補助金の申請状況によると、同1日時点で処遇改善の対象となる看護職員は61万3千人。20年末時点で働いている看護職員は約166万人とされているので、賃上げの対象となったのは全体の4割弱です。
そもそも看護職員の賃金は、夜勤手当を含むと20代では全産業の平均よりも高くなりますが、30代になると逆転。看護職員が最も多い40代前半で、7万円以上低く、その差は50代前半で、14万円まで拡大します。
コロナ禍では、必要な人も、必要な物も、必要な金も、足りていないのに、現場の人たちには「やる」という選択しかありませんでした。いつだって不合理のしわよせは現場に押し付けられる。
超高齢社会の日本では、看護師さんは、「私」にとって欠かせない存在であり、「私」たちと同じように「労働者」である以前に「人」なのに、「人」として守られていないません。
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厚生労働省によれば、2025年には6万~27万人の看護師が不足すると推計されています。「公正な分配」とは何だったのでしょうか。みなさんのご意見、ぜひお聞かせください。
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