ネットの批判すら鎮火。KDDI社長の謝罪会見をプロはどう見たか?

2022.07.06
 

ビジュアルで失敗する例

企業トラブルでは、同様に社長自ら矢面に立ったものの、却って反発を呼んでしまった例は多々あります。2013年に起こった食品偽装・誤表示事件。当時の店舗の経営母体である阪急阪神ホテルズ社長は、会見で記者の質問に答えたのですが、報道されたニュースをみた視聴者は「偉そう」「不遜」と、逆に燃料投下となってしまい、結果としてホテル社長だけでなく、出身母体の阪急阪神HD役員も退任することになってしまいました。

社長会見では暴言を吐いた訳でも、遊覧船事故のような意味不明の発言もなく、記者の質問にスキ無く即答し、むしろ理路整然とホテルのスタンスや食品業界の商慣習などを説明しています。これが反発を呼んでしまったのでした。

つまり危機対応コミュニケーションは正当かどうかを訴えるためのものではなく、事態収束を目指すものという原則が実現出来なかったのです。阪急ホテルズ社長はうそや言い逃れをしたのではなく、雰囲気が許せないと思わせてしまったことこそ、最大の会見失敗要因だと思います。

ビジュアルは危機においてきわめて重要です。

説得力の根本ともいえます。誰もが疑心暗鬼になる危機において、すくなくとも見た目どっしりと、そして弁が立ちすぎて言い訳にならないよう注意しつつ、専門的知識や理解がにじみ出る風格。

結局付け焼き刃では難しいのですが、それでも見ている人に伝わりやすい情報として、ビジュアルが大事であることをあらためて感じた次第です。

尚、コロナ下のヒーローだったクオモ前知事は、ハラスメント問題などの責任を取り、その後辞任しました。コロナ対応に問題があったことやセクハラ行為について、(セクハラ起訴は取下げになったらしい)非難される行いはあったのだろうと思います。

このことは逆に、人格とは関係無く技術としてのコミュニケーション、プレゼンテーションは実現できるということではないでしょうか。

巨大企業には珍しい、技術系経営者・高橋氏は、短期利益を上げるだけで後は野となれ山となれ・焼き畑農業式プロ経営者と呼ばれる種とは別次元の、真のプロのお一人だと思いました。

image by : Casimiro PT / Shutterstock.com

増沢隆太

増沢隆太

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「謝罪のプロ」として著名人記者会見のたびにテレビ、ラジオ、新聞でコメントしまくるコミュニケーションのプロ。ロンドン大学大学院では戦争研究を行い、帰国後外資系企業数社でブランドマーケティングを担当した。その後、人事コンサル会社勤務を最後に独立し、人事・経営コンサルタントとして活躍。現在は講演、企業研修、大学生向け講座などで全国を回るほか、東京工業大学の特任教授も務めた。

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